『カレーの海で泳ぎたい インド料理の見方・食べ方・楽しみ方』(続木義也・マリア書房)の感想
『カレーの海で泳ぎたい インド料理の見方・食べ方・楽しみ方』(続木義也・マリア書房)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
それでも、充分におもしろかったです! サブタイトルに、『インド料理の~』とあるとおり、内容はカレー中心のインド料理の紹介本というか、ガイドブックの枠を越えて、インド料理とは何か? インド人の価値観は、どのようなものか? インド人と日本人の考え方の違いは? といったような、ディープなものです。
そして、驚くべきことに、書かれた方は、京都のカフェのオーナーなのですよ。
先に、いただけないところを挙げましょう。載っているお店が、京都と東京に限られていることです。両都市から遠い方は、旅行の機会に行ってみましょう。
あと一つ、超私的に、「インド人とネパール人」の章で、インド人がネパール料理を批判しているところで、ちょうど、私はネパール家庭料理、ダルバートを食べようとしていたので、まあ、インド料理人の見解と思いながらも、少し切なくなりました。
しかし、やはり、この本はおもしろい! カレー党、インド料理好き、インドファンの方はもちろんですが、カレーが体質的に受け付けない方を除いて、多くの方にお勧めできます。
何よりも、作者様の探求心に、精神的土下座です。カフェのオーナーが、趣味の範囲の食べ歩きエッセイと、簡単に思うなかれ。
このカレーの味わいの秘密は?
どのようなスパイスを、使用しているのか?
ナンがインド料理の定番とされているが、本当に正しいのか?
北部と南部のインド料理の違いとは何か?
などなど、作者様のインド料理にはまる、きっかけから始まって、その魅力、したたかながらも魅力的なインド人達、京都や東京における個性的なお店のことと、まるでスパイスのように広大に広がっていくのです。
たくさんあるカレー本、インドのエッセイと、本書が異なる点は、作者様の、インド愛をともなった好奇心と、バランス感覚のように思われます。
「インド料理(もしくはインド、インド人)とは、こういうものだ!」「正当なインド料理を伝えるぞ!」みたいな気負いがなく、おいしいものを愛している、そんな気持ちが伝わってきます。
購入してよかったし、何度も読み返したくなる名作だと思います。それでは。
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