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2018年10月 5日 (金)

『少女椿』(丸尾末広・青林堂)の感想

『少女椿』(丸尾末広・青林堂)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 読了した『少女椿』は、2000年6月1日 改訂版第2刷。初版、改訂版と、いくらかの書き換えか削除があるようですが、私は細かい部分にはあまり興味がないので、その点については省略いたします。取りあえず、マイ『少女椿』は、主人公の少女、みどりが、困っているような、放心しているような感じで座っている、全身像が描かれています。

 内容は、おもしろかったですよ。ラストこそ、救いがありませんでしたが。
 あらすじというか、ストーリーも、とてもシンプル。グロが売りの見世物小屋で、いじめられながら一人ぼっちで働くみどりのもとに、ある日、ワンダー正光という小男が現われます。彼のガラス壺に入る芸によって、つぶれかけていた小屋は息を吹き返す一方、みどりは優しくされます。ワンダー正光は幻術使いでもあり、みどりにもっとも辛くあたっていた男が、不審死を遂げます。みどりは、だんだん気味が悪くなり、家に帰ることを希望するのですが・・・・。
『薔薇色ノ怪物』のような汚物描写はありません。けれども、これでもかとばかりに、詰めこまれた、フリークスのイメージがすさまじい。観客達の幻覚? も含めて、非常にグロいです。
 加えて、いやな男とはいえ、凄惨な死にざまとか、内容面では、例によって、容赦のない残酷さが含まれています。それでいながら、描かれている時代は恐らく、昭和初期でしょうか、レトロで装飾過剰な美しさが魅力でもあるのです。
「ああ、きれい」と、喜んでいると、「うえぇ、ひどい」と、気分が悪くなるなど、本当に、この作品は、読む側の気持ちと感覚を引っかき回し、乱してくれます。そう、まるで、描かれている見世物小屋のように! 読む私は、観客の一人でもあるわけです。
 作風としては、高橋葉介の「傷つきやすい青春」「腸詰工場の少女」に、少し似たものを感じました。レトロファンの私としては、また読んでみたい作家様です。それでは。

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