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2018年10月17日 (水)

『聖ロザリンド』(わたなべまさこ・宝島社)の感想

 コミック『聖ロザリンド』(わたなべまさこ・宝島社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 大昔に少し読んで、なかなかショッキングだったことを思い出し、購入してみました。この宝島社版は、作者様が44年ぶりに新作の第0話を描き下ろしたそうで、これがまた、なかなか本編への重要なファクターとなっていると、思います。
 やはり、ホラーや残虐な場面が苦手な方にはお勧めできませんが。

 あらすじとしては、割とシンプルです。ロザリンド・ハサウェイという、天使のようにかわいらしい、わずか8歳の少女が、次々と殺人を重ねていくというショッキングなもの。前半は執事のアルフレッド、後半は実父がナレーター役を務めています。「うそをついたら いけないのよ」と、母の言いつけを守りながら、気に入ったものを手に入れるため、あるいは、死にたがっている者を天国へ送るため、ロザリンドが殺し続けることを、執事の次に母が知って、心中を図りますが、母のみ死亡します。これが前半。
 後半、ロザリンドは矯正施設のような修道院から脱走し、ひたすら実家を目指します。しかし、母の死を知らされ、半狂乱に(旅からここまで、殺しっぱなし!)。父は、ロザリンドの願いを聞いてやろうとします。
 たぶん、読んだことのない方がこの本を手に取っても、「普通の少女漫画じゃないの?」と、思われるでしょう。それくらい、愛らしい少女による、悪意のかけらもない(善意のかたたまりともいえる)凶行は、相当怖いです。
 ただ、いただけないところとしては、ロザリンドの怖さを知っていたはずなのに、修道院における薬物の管理が甘すぎること、いくら大らかな時代? お国柄? であるにせよ、わずか8歳の少女が、泊りがけの一人旅なんてできるのでしょうか?
 そういった細かい疑問をスルーできれば、このお話は、外見と中身のギャップに驚愕させられる、極上のサイコホラーといえるでしょう。私も、ある場面で、分厚いこの本を取り落して、叫んでしまったほどです。
 そんな天使の恰好をした殺人鬼、ロザリンドですが、驚いたことに、人格のゆがみは見当たらないのです。特別に甘やかされて育ったわけでもありません。ただ、死体などへの生理的嫌悪感が、欠落しているように感じられます。だから、従姉のダリアの指輪を、噛み切った薬指ごと、保存するのでしょう。
 性格の方も、のほほんとしていて、普通の少女が喜ぶような、かわいいものやきれいなものが大好きで、大人でも子供同士でもよくしゃべります。ロザリンドが怒ったのは、前半、好きになったイリアスという少年が、うそをついたと知った時。それから、後半、実家の家政婦から母がすでに亡くなっていることを告げられた時、ロザリンドは、うそだと言って、最大級に激怒し、むごい仕打ちを行ないます。その悲しみをともなった憤激の殺人衝動は、実父にまでも向かうのですが、父は、母に会わせてやろうとするのでした。
 そのラストシーンですが、ホラーとは思えない、美しいものになっています。哀切極まりないと、言うべきでしょうか。胸にしみるというか、これ以外の表現はないかと思われるのです。小生意気な殺人鬼がひどい目にあって、胸がすくとか、そういうものではありません。
 ホラーですが、心理学を調べたくなる深い内容、それでいて、抒情性にあふれています。お勧めいたします。それでは。

 

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