『星界の戦旗Ⅵ-帝国の雷鳴-』(森岡浩之・ハヤカワ文庫)の感想
小説『星界の戦旗Ⅵ-帝国の雷鳴-』(森岡浩之・ハヤカワ文庫)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
あらすじとしては、帝都ラクファカール失陥から10年後のお話で、新帝ドゥサーニュがアーヴをまとめる一方、広大な版図において、連絡不能となっていたビセス鎮守府等(記憶違いだったら、ごめんなさい)で、副帝ドゥビュース(ラフィールの父)が把握する第二艦隊で、ドゥヒールが赤啄木鳥艦隊(ビュール・サヒアル)の司令長官(グラハレル)として、敵四カ国と戦っております。
ラフィールもまた、艦隊司令長官、帝国元帥、皇太女であり、皇帝の命により、その所属する練習艦隊を、霹靂艦隊と変え、バハメリ門沖会戦、攻略戦を行なうことに。
要するに、アーヴ怒涛の起死回生というか、挽回戦というわけです。それはわかるのですが、ストーリー上の視点がラフィール、もしくはドゥヒールといった、トップからのものゆえ、敵艦隊と追いつ追われつの展開や、生き馬の目を抜くような作戦行動などはありません。戦いの犠牲の描写は、いくつかされています。が、さらっと流されていますから、「おや?」と、戸惑ってしまいます。まあ、このシリーズ自体、平面宇宙の戦いといった表現がされていますゆえ、そうなるのでしょう。大体、血みどろの戦闘が売りのエンターテイメントなんて、私の肌に合いませんから。
それにしても、ストーリーのテンポのよさを作者様は重視されたためでしょうか、やはり、各場面の印象が薄味~。ジントも副長に出世しましたが、またしても(やはり、というべきか)、ラフィールとの仲に進展はありませんでした。このままでは、不老長命なラフィールと、オッサンのジントによる、「恋は時空融合(ゴール・プタロス)(自主規制!)」みたいなエピソードに。ペネージュ、コトポニーといったアクの強い面々のお話も読みたかったです。
そして、何よりも! エクリュア、アトスリュア・・・・ほら、こう書き連ねると、「誰だっけ? どんな小話があったかな?」と、戸惑うでしょう。森岡浩之さん、発行の間が少々開いておられますよ。
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