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2019年3月 1日 (金)

『大奥怨霊絵巻』(小林薫・青泉社)の感想

 コミック『大奥怨霊絵巻』(小林薫・青泉社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

『大奥怨霊絵巻』は、「御末あらしの怪」「あかずの間の怪」「染次の井戸の怪」「おりうの駕籠の怪」「こやの塚の怪1」「こやの塚の怪2」と、連作短編となっています。
 さらに、『死者の花嫁』という短編と、江戸城についての、あとがき漫画が収録されていて、構成的には、まあまあお得な内容ではないでしょうか。

『大奥怨霊絵巻』のヒロインは、篤姫。徳川将軍、家定の御台となりますが、江戸城到着早々に、怪奇現象に見舞われます。
 けれども、表向きは暗君のふりをしている家定は、その知恵と機転に加え、瀧山、お志賀などの協力により、実は憑依体質だった篤姫の能力をフル活用して、手ごわい怨霊を成仏させていく、という感じのあらすじですね。
 おもしろくなくはないのです。ただ、おどろおどろしい舞台なのに、作風があっさりしていると申しましょうか。
 黒幕がいるのですが、怨霊は皆、気の毒な事情があったというのは、私としては、ちょいと納得がいきませぬ。HONKOWAなどを読んでいれば、同情すべきものと、底まで腐っている、悪辣なものがいたはず。
 加えて、大奥という独特な世界を描きながら、豆知識も披露されていません。それでも、篤姫は、おてんばながら利発ですし、家定も現代風なイケメンなのは、なかなかいいと思います。
 さて、短編『死者の花嫁』の方ですが、私はこちらの方が好みです。ごく当たり前の生活を送るOL、真由子は気づかないうちに、さして親しくもない知人によって、幼くして亡くなった男の子の花嫁にさせられてしまいます。そんな不気味な絵馬の写真が送りつけられるや、怪奇現象が起こり、彼女は保険会社の男性と、謎解きに向かう、というもの。スリル&サスペンスのようでいて、ラストでは・・・・。めでたく締めくくられるはずが、意表を突かれましたね。おもしろかったです。それでは。

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