『闇の世界への招待状』(リチャード・ザックス著 バックアップ・ワークス訳 KKベストセラーズ)の感想
お久しぶりです。本業が忙しかったり、身内でドヤドヤだったりして、体調まで崩してしまい、ご無沙汰して、すみませぬ。
『闇の世界への招待状』(リチャード・ザックス著 バックアップ・ワークス訳 KKベストセラーズ)の感想を申します。いくつかのネタバレは含まれていますが、中身のディープさには及ばないと思いますよ。
困りましたね(うれしい悲鳴)。この本は絶版のようですが、今年でおもしろかった本のベストテン上位入りをするでしょう。
帯カバーにあるとおり、『百科事典や歴史教科書に決して載らない! 純粋な驚きと不届きな愉しみにあふれたエピソードの数々。』が、掲載されています。
内容としては、1章 セックス、2章 犯罪と処刑、3章 日常生活、4章 医学と薬 と、いう風に分類されており、さらに、細かい歴史上のエピソードが描かれています。すでに、章のタイトルからして、想像を刺激してくれますが、適当なうわさ話を載せたものではなく、巻末にはボリュームある参考文献が紹介され、中身の人名索引もあって、この本を事典的に活用できるわけです。
もっとも、紹介されている事例が世界中平等に、というよりも、ヨーロッパとアメリカ寄りになっていて、中国や日本のものは少なめである点、欠点といえるでしょう。しかしながら、センセーショナル、いや、エキサイティングというより、ショッキングな内容は、眠れない夜の暇つぶしに読むと、逆効果になるに違いありませぬ。
さらに、もう一点、デメリットとしては、白黒ながら写真や絵画等がいくつか掲載されていますが、むごいものもあるということです。予備知識のない私は、2章の遺体写真で、「ふぎゃっ」と、叫んでしまったほどです。取りあえず、ひどいのは一枚だけでしたが、残酷系が苦手な方は、注意された方がいいと、思います。
しかし、内容がかたよっていて、怖い写真があっても、やはり、私はおもしろかったです。2章はもちろんですが、3章と4章が特に!
私は、ヨーロッパの庶民を描いた絵画で、なぜ女性はお尻を出しているのが多いのかと、子供の頃から不思議に思っていましたが、その謎が解けたのですよ? そして、キリスト教の聖職者達が衛生面において、極めて無頓着だった理由も、ようやくわかりました。
4章では、ヨーロッパの大昔の医学というか治療法が、でたらめや適当どころか、懇切丁寧に施術を受けるほどに、命が危険にさらされるというエピソードは、仰天ものでした。これは、源氏物語などで語られる、加持祈祷より、ひどいかも。
もちろん、現在の抗生物質や手術のありがたさが薄れはしませんが、やたらと欧米風をありがたがる、妙なコンプレックスが軽減されるでしょう。そのようなわけで、雑学好きの方へ、裏歴史的なものが知りたい方にもお勧めです。それでは。
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