「赤色エレジー」(林静一・小学館)の感想
コミック「赤色エレジー」(林静一・小学館)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
こちらは、小学館文庫です。収録されている作品は、次のとおり。
赤色エレジー
アグマと息子と食えない魂(デビュー作)
吾が母は
赤とんぼ
山姥子守唄
花ちる町
桜色の心
小梅ちゃんという飴のデザインで有名な方ですが、作品は「赤色エレジー」を除いて、なかなかメルヘン調でした。おもしろくないわけではないのですが、感覚的なものがあって、言葉にしにくいので、省略させていただきます。
そして、メインの「赤色エレジー」ですけれども、200ページ越えのの作品ですが、あらすじは、至ってシンプル。
漫画家になることを夢見ながら、作品はボツまみれで、鬱屈した日々を送る一郎と、そんな彼に寄り添う幸子。二人は同棲していますが、すれ違いやケンカが多くなっていき、やがて、一郎は辛い現実に気づく、というもの。
発表時期も近いのか、上村一夫の『同棲時代』にストーリーが似ています。
しかし、1970代は、オイルショックを除けば、今よりも庶民が生活しやすそうなのに、主人公やその家が貧乏だという設定が多いのでしょうね?
『同棲時代』との違いは、性生活などの、生々しいエピソードがないこと、でしょう。でも、漫画というより、シンプルなイラストみたい、と思って、のんびり読んでいますと、思いがけないエロティックさ、生臭さに、驚かされてしまいます。
冒頭からして、頭のない人物が、首の切断面? から、血?を吹きながら、一郎をたしなめているうちに、切れた一郎が、彼の腹を斬りつける? という、おどろおどろしいシーンで始まります。
見開き一杯に、電灯と大きな蛾が描かれていたり、手抜きか? と疑ってしまうほど、画面が白っぽく、人物が小さく描かれていたりと、大胆なのか繊細なのか、私はシュールという表現がぴったりだと思います。
この世界観や表現は、作者様独特のものでしょう。だから、受け入れられない方もいるでしょうが、こういう漫画も有りだと感じると、なぜか自分がその場にいるような気分になるから、本当に不思議です。
大人向けの、リアルな、辛口メルヘンだと、私は思います。それでは。
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