『紫の履歴書』(美輪明宏・水書房)の感想
『紫の履歴書』(美輪明宏・水書房)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
あらすじは、有名な作者様の名前で十分でしょう。あとがきによれば、昭和43年に最初に出版されてから、加筆修正されたり、出版社が変わったりして、これで四度目の出版だそうです。奥付を見ますと、私の持っているのは、平成5年10月1日第二版。確か、4,5年前、日帰り温泉旅行の古本屋さんで購入したと、記憶しています。
内容は、想像以上におもしろいです。作者様の芸術(特に音楽)への情熱と、創造する苦労、世間の偏見との戦いは、すごいなあとしか、言えません。
子供の頃の、長崎での被爆体験は、また生々しくて恐ろしいものでした。
さらに、華やかな恋愛遍歴……は、相手の数と得恋&失恋パターンが多すぎて、だんだん、頭がこんがらがって、わからなくなりました。けれども、私は、美男美女は基本、世渡りが楽だと思っていたのですが、この方にとっては、むしろ大変だったようで。
それにしても、もう犯罪ではないかと、腹が立つような、セクハラとパワハラの多さよ! 現在でしたら、きっと、関係者は全員、警察につかまっているでしょうに、昭和の時代はアバウトすぎです。
ゆえに、作者様も一時期、ひどい人間不信と、自らの美貌をも憎むほどの自己嫌悪になったようですが、志の高い人達と信仰によって救われ、いっそう音楽の道を歩んでいきます。このあたりは、胸が熱くなりました。
ところが、この作品、かなり特殊な構成になっているのです。前半は、ですます調で、中盤以降は、だった調。エピソードの切れ目、唐突に詩が入りますし、一人称も前半は僕、後半以降は私です。加えて、私だけおかしいのかもしれませんが、文章のリズムが今一歩乗り切れず、100ページほど読んで、挫折、放置しておりました。それを、最近、再チャレンジして、何とか読了したわけです。
だから、この作品は、暇つぶしというよりは、読書の時間に、じっくり、内容を思い浮かべ、自分ならどうするだろうと考えて、楽しむ内容だなと思いました。お勧めです。
機会があれば、また別の作品も読んでみたいですね。それでは。
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