『貧困脱出マニュアル』(タカ大丸・飛鳥新社)の感想
『貧困脱出マニュアル』(タカ大丸・飛鳥新社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
この本のあらすじは、帯カバーの文章のとおり、「綺麗ごとなしでお金を稼ぐ25の方法」とあり、間違ってはおりませんが、最初にいただけない点から申し上げますと。
貧困から脱出するための、具体的な方法が少ない、あるいは情報がやや古いようです。
本当に、お金がない人がわらをもつかむ思いで、この本を読んでも、即効で役立ちそうにありません。
私のような者でさえ、知っている情報が載っています。
加えて、初期費用が結構かかるものもあって、手も足も出ない、というべきでしょうか。
ただ、この本は怪しいセミナー、勉強塾、占いに勧誘しないので、良心的です。
それでも、未来を予測する方法とか、はっきり描かれていないので、タイトル詐欺ではないかと、思ってしまいます。
しかしながら、私は結構、時間を忘れて読むことができました。
この本の本質は、貧困から脱出するノウハウというより、貧困というものが、いかに根深く、恐ろしいものか、美しいだのハングリー精神だのという美辞麗句で、ごまかされているか。がめついやり方であろうと、貧困から脱出することは、いいことなのだと、主張しているように、私は思われました。
特に、作者様や取材を受けた方々による、凄絶な貧困、DV体験は、絶句するしかありません。
そして、日本がいかにシングルマザーやその子供達に、制度的ケアが行き届いていないか。下手をすると、DV夫は慰謝料も養育費も払わないで、丸儲けできる事実に、私はまたまた息をのみ、自分の不勉強ぶりが恥ずかしくなりました。
「あんなだらしない男に、お金を請求するだけ、無駄」と判断して、誇り高く離婚する女性は、子供と一緒に貧困に長期間あえぎ、親子そろって、収入の少ない非正規雇用の道をたどる、最悪の未来が待っているということです。
この本のメインテーマは、本当に貧困という悪魔の正体、そして、離婚、毒親といった悪条件下であろうと、貧困からの完全脱出を目指せ! と、精神面において激しく説いておられるようです。
そういうわけで、私は、少し生活に余裕のある方、人生の岐路に立つ方、若い人達全般に、この本をお勧めしたいと思います。それでは。
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