『宇喜多の捨て嫁』(木下昌輝・文藝春秋)の感想(追記)
前回の『宇喜多の捨て嫁』(木下昌輝・文藝春秋)の感想の追記分です。こちらも、ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
こちらの短編集の中で、私は「ぐひんの鼻」が一番気に入っておりますが、もし、どなたかに勧めるのであれば、やはり、表題作の「宇喜多の捨て嫁」ですね。
先ほど、軽く読み直してみたのですけれども、「五逆の鼓」も通じている部分も発見して、驚きました。やはり、すべてを読んだ方が、宇喜多直家の人となりが浮き彫りになっていくようです。
「宇喜多の捨て嫁」では、直家の四女、於葉が、嫁ぎ先である後藤家の家臣、安藤相馬から、碁石の捨て石ならぬ、宇喜多の捨て嫁と非難されて、嫌悪します。やがて、彼女は後藤家内で、父の直家と通じている裏切り者の正体を知り、討ち果たそうとするのですが……。
名前に関して詳細に説明されていますが、これが後半部分の重要なつなぎになっています。直家自身の出番は少ないのですけれども、私は彼が、一連の騒動と悲惨な結果を予期し、裏で糸をあやつっていたように思えてなりません。
悪の帝王や真の極悪人は、攻撃的であるよりも、悪い意味で、聡明でないといけないのだなあと、感じました。
「ぐひんの鼻」は、そんな天才肌の直家に対して、主君でありながら凡庸な浦上宗景。しかし、非情な命令は出しまくるため、直家以上の極悪人という人格が、インパクトたっぷりに表現されていました。こういう人物が私のそばにいたら、速攻で逃げますね。
続けて感想を書いたのは、私は、かなりこの本を気に入っているわけです。それでは。
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