書籍「タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物」(キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子 訳 太田出版)の感想
書籍「タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物」(キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子 訳太田出版)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
海洋生物や雑学、生態学好きの方に、特にお勧めしたい、タコに関するノンフィクションものです。
この説明とタイトルで、あらすじは、ほぼ言い尽くしました。しかしながら、説明されている分野は、極めて広いです。
もちろん、最大の原因は、タコが身近にいながら、実に謎に満ちた生き物であるからなのですが、作者様の好奇心と構成力が半端でないところも大きいと、私は思います。
まず、一、ニ章で、タコ漁や料理について言及してから、習性、能力、謎、人間社会への応用、環境変化によるタコの危機と、幅広い内容を、専門用語を多用せず、わかりやすくまとめています。
しかし、難解な部分は含まれていますし、大勢の専門家の研究成果もそうですが、名前が多すぎて、眠くなったり、戸惑ったりしました。このことは、欠点といえるでしょう。
それでも、私は、おもしろかったです。第四章のミミックオクトパスは、岩や海藻に擬態するのではなく、ウミヘビ、クラゲ、イソギンチャクになりきるそうです。
研究室のタコに、腐った鶏卵を与えると、そのタコは相手に、卵の殻を投げつけ、海水を吹きかけたのを、「知性がある」と説明されていましたが、私は感情表現が激しいと、感じましたね。
タコが隠れたり、天敵の目をくらませたりするため、擬態を行なうのは、大して珍しくもないのでしょうが、どのような過程を経るのか、謎だそうです。
腕や吸盤の能力も高く(タコに似せたロボットが開発中!)、目は人間の目に似て高感度、飼育係の顔も覚える、頭の良さを持ちながらも、天敵が多いため、寿命は数年。
それに、タコの雌は、命を削って卵の世話をしますが、産みっぱなしです。人間も含めて、高い知性を持つ生物は、子育てに大変な時間をかけるのに、タコは単独で、擬態や狩りの能力を身につけ、天敵から防御し、逃げます。
本当に不思議。タコって、未知の能力を持つ大した生き物です。
少なくとも、私は、「このタコ!」と、悪口を言うのはやめます。海洋ドキュメンタリーや水族館で、じっくり観察してみたくなりました。それでは。
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