『全日本食えばわかる図鑑』(椎名誠・集英社文庫)の感想
『全日本食えばわかる図鑑』(椎名誠・集英社文庫)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
表4の説明文のとおり、「当世流行るグルメとはキビしく一線を画す、正しい高級質素料理」について説くことをメインにした、シーナ流うまいもの文化論(エッセイ)です。
はい、お笑い要素たっぷり、独特の語り口調もおもしろいものですから、非常に満足いたしました。
思い出の一品、野外の料理、個性的な人からのごちそうなど、50の美味について描かれています。
ただーし! 美味しんぼの海原雄山が追究するような、格調高い料理は皆無です。
のり弁や、調味料びちゃびちゃという、リーズナブルだけれども、体にいいとは言えない(要するに、脂たっぷり、濃厚な味で、めちゃくちゃおいしそう)料理ばかりですから、ダイエットなどの食事制限を受けている方は、要注意です。
いただけないところとしては、巻末に二つ対談が載っているのですが、これらは必要なのでしょうかね?
私はまだ、対談でおもしろいと思う本を読んだことがないから、思ってしまうのでしょうけれど。
紹介されているのは、いかにも、食べることが好きな男性らしい、シンプルかつ豪快な料理が多いですね。
「ダイコン千切り煮かえし味噌汁はエライ!」、ジャガイモの味噌汁は、盲点でしたね。いつの間にか、私は卵を使わなくなりましたが、また入れてみようかな。子供の頃、味噌汁の中の卵が大好きだったことを、ノスタルジックに思い出しました。
「挑戦料理は男の料理」、この中で紹介されている料理は、カレー、スパゲッティ、みんなおいしそう。ちょっと嫉妬してしまいました。
「モリソバの伝統的欺瞞を粉砕する」、旅行やスキーで行って食べた、長野のそばは、どこもかしこも、涙が出るほど美味だったのを、ありありと思い浮かべてしまいました。気取ったソバ屋が嫌いという、作者様の主張に百パーセント賛成いたします。
「冷やしトマトのがぶり食いに拍手」、今は秋なのですが、暑いせいか、おいしそうすぎて、トマトの幻影にのどを鳴らしました。
おいしいエッセイでした。それでは。
ご協力お願いします。
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