『旅のつばくろ』(沢木耕太郎・新潮社)の感想
書籍『旅のつばくろ』(沢木耕太郎・新潮社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
あとがきによりますと、こちらは、JR東日本が発行している「トランヴェール」という雑誌に連載されていたそうです。
私も以前に読んで、大いに感動した、『深夜特急』の作者様ですが、こちらは日本国内の旅行記で、41編が掲載されています。
旅そのものが目的であったり、あるいは、用事で出かけた先で見聞した出来事であったりと、行き先も様々ですが、またしても、私は脱帽せざるを得ませんでした。
お話の一編ごとは、独立していたり、緩くつながっていたりしていますけれども、どこから読んでも、ほぼ大丈夫な仕様です。
だから、私は、のんびり寝転がってでも読める小作品集だと予想しておりましたが。 うれしい精神的土下座をさせていただきます。
日本国内という身近な旅であろうとも、存分に知らない場所、不思議な出会いは存在するのでした。
それが旅の本質であり、私は当たり前すぎる感慨を抱いてしまったと、自分でも思います。
人はなぜ、旅に出るのか。
時間に余裕があると、旅行したがるのか。
もちろん、出不精な人、多忙や病気といった事情で、出かけられない人もいます。
しかし、万難を耐えて、出かける人もいます。
出発のことを、旅立ちという理由。
人生は、旅そのものなのです。
毎夜の習慣でもそうですが、病気等で眠っている時も、人は自分の内面に旅をしているのです。
腐女子な私にしては、恐ろしくポエムっぽい感想で、すみません。
そうしたくなる作品なのですよ。
特に、私は、「寄り道の効用」というお話が好きです。
作者様が鎌倉へお墓参りに行った帰りに、というだけの筋ですが、古い名所旧跡、鴨長明、鏑木清方までストーリーは進んでいき、ついには、 身内の謎が解けてしまうのです。
この予想外のどんでん返し(?)について、作者様は、「自然の不思議」「歴史の不思議」ではなく、「人生の不思議、と呼ぶべきだろうか。 いや、そんな大袈裟な物言いをせず、もっとシンプルに、寄り道の効用と考えた方がいいのかもしれない。」だそうです。
はあぁ。ため息が出ましたね。お勧めいたします。それでは。
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