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2021年11月 3日 (水)

『ある設計士の忌録』(鯛夢・朝日新聞出版)の感想

 コミック『ある設計士の忌録』(鯛夢・朝日新聞出版)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 一話完結で、7つの短編が収録されています。
 あらすじ的なポイントを説明いたしますと、工務店を営む青年「私」は、いわゆる見える人。時折、土地や建物に関する奇妙な依頼を受けたり、不可解なトラブルに遭遇したりするのですが、手に余る場合は、特殊な能力の持ち主である設計士の「先生」にそれらをお願いします。先生は見事に解決しますけれども、その報酬が非常識なまでに高額。ゆえに、依頼者と、よくもめますが、先生は霊感商法でもうける守銭奴ではなく、その能力は確かに本物なのでした。

 霊能力者は、寺尾玲子さんや斎さんばかりでなく、ブラック・ジャック的なこの設計士さん、「先生」もいらっしゃるということなのですね。
 それだけに、先生の相手は、猛烈に強いです。凡人がその解決方法を真似るなど、とても不可能でしょう。
 だからこそ、先生の要求する金額は、目玉が飛び出そうなほど高いわけです。

 7つのお話は、どれも信じられない不可思議な、しかし、奇妙なリアリティーを感じさせるものばかりです。
 こういう演出やストーリー展開は、作者様の力量のなせる技でしょう。
 冒頭の「箱」のお話には、なかなか怖い、霊的表現がありますが、他はないかと思います。
 が、じわじわ来ますよ!
「あかずの間」で、先生の見積を蹴った依頼主と、その関係者の顛末は恐ろしい。「私」のモノローグが、また効果的です。
 次の「宗教施設」も、先生をうまく利用したつもりの依頼者でしたが、先生の方が一枚も二枚も上手でした。
 一体、先生は(間違いなく、霊感はあるようですが)どのようにして、特殊能力を使えるようになったのでしょうか?
 これは、なかなか大きな謎といえますね。
「二本の刀」では、巨大な霊的怪物? 邪神? のような悪い存在を、先生が仕掛けによって封印します。先生は傍若無人なため、すんなりとはいきませんでしたが、ダイナミックなお話でした。
「地下迷宮」は、またもや邪神? 魔獣? が巣食う場所。先生のお弟子の瑠子さんが登場しますが、彼女は霊感のないリアリストながら、どんどん場をはらう? それとも、浄化する? 不思議な能力の持ち主なのでした。こちらも、謎めいていますね。
 どうやら、続きの単行本が発売されているようなので、このような予想の斜め上を行く、恐ろしくも摩訶不思議なお話をまた味わってみたいです。お勧めいたします。それでは。



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