『神の左手 悪魔の右手』(楳図かずお・小学館)の感想
コミック『神の左手 悪魔の右手』(楳図かずお・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
今回、残念ながら、借り物の本でしたので、記憶に頼っております。大きな間違いはしていないかと思いますが、あまりにひどい場合は、コメント欄でご指摘くださいますよう、お願いいたします。
一度、感想をアップしたいと願いながらも、ずっと避けておりました。
漫画の感想として、非常に難しい部類に入る作者様として、私は、永島慎二、安部愼一、そして、この方であると、思っているからです。
なぜなら、楳図かずお作品は、怖いという感覚に訴えかけてきますからね。
だからといって、「怖いものは、怖いの!」では、感想になりませんから、あのおぞましさ、意外性と混然一体となった、逃げたい、でも、ふり返らずにはいられない、あの恐怖の魅力を文章化してみたいと、思っておりました。
私ごときで、うまくいくかなあ。
収録作品は、「錆びたハサミ」「消えた消しゴム」「女王蜘蛛の舌」「黒い絵本」「影亡者」。すべて、100ページ以上あって、読み応えがあります。
主人公は、小学一年生の少年、想。彼には他人の夢、特に悪夢にシンクロしてしまう能力があるのですが、両親や姉の泉からは、あまり信用してもらえません。やがて、想は悪夢を見るだけでなく、邪悪な人々や怪物らしきものと、戦う力も発揮するようになっていきます。
よく読めば、なぜ想が特殊能力を使えるようになったのか? 他の家族に、そんな力はないのに、どうやって会得したのか、という、なかなか重要なポイントが説明されておりません。だから、完全な設定にこだわる方には、あまり向いていないかと、思います。
それでは、簡単な感想を。
「錆びたハサミ」、冒頭の、悪夢にうなされる想の表情がリアル怖い! しかし、大元の怪物は、何者でしょう?
「消えた消しゴム」、先生に、こんないたずらをする生徒がいたら、非常に迷惑ですな。それでも、ちょっとした好奇心→いたずら→惨劇へと変わっていきます。
「女王蜘蛛の舌」、蜘蛛の描写が、当然ながら、とてもねちっこいです。ごく小さい虫のはずが、大群で襲いかかります。さらに、女の執念のままに、蜘蛛の群れが人間に変貌する様子は、作中でもっとも恐ろしい表現です。
「黒い絵本」、私的に、おもしろさではトップ。4、5歳の病気の女の子、ももは、家で一人寝ている合間に、パパの作ってくれた絵本を楽しみます。その手作り絵本は、血生臭さと惨殺の影を帯びており、パパは実際に恐ろしい犯罪を犯していたのでした。淡々と、襲撃していたはずのパパが、次第に心に異常をきたし、その魔手をももに向けていく狂気とその表情には、ぞっとさせられます。
けれども、多量のケーキで責められる少女や、ももの状態を心配して、たまたま訪問した女性が両足を折り砕かれる描写には、こちらまで息苦しくなりました。
「影亡者」、想はなぜか、人々の背後にいる、影亡者の姿が見えるようになりました。守護霊というより、守ってくれる存在であり、もう一人の自分自身といったところ。そして、想は姉の友達、美代子に、怪物のような姿をした、異様な影亡者が憑いているのを発見します。しかも、その影亡者は、美代子をあやつって、多くの人々を苦しめ、殺すのが目的らしく……。作中、もっとも残虐&流血描写の多いお話です。
このとおり、感想を書いてみましたが、やはり、その魅力を言い尽くせませんでした。
また、様々なシリーズ本を入手して、読んでみるつもりです。
不条理ながらも、圧倒的に強い魔物的存在が織り成す、残虐と鮮血の恐怖に興味を持たれたならば、読んでみてください。お勧めいたします。それでは。
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