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2021年12月26日 (日)

『心の森に花の咲く』(永島慎二・大都社)の感想

 コミック『心の森に花の咲く』(永島慎二・大都社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 手元にあるのは、昭和53年10月20日発行の初版です。収録作品は8編で、プレイコミックから少年ジャンプ、高一コースと、掲載誌もバラバラという、おもしろい単行本です。
 けれども、作者様の個性らしく、ジェットコースター的ストーリー展開や、血まみれの格闘といった、漫画のお話及び演出でありがちなものはなく、個性はありながらも、ごく普通の(若い)一般人が、平凡(平穏というべきか)な生活の中で悩み、あがき、時には誰かと触れ合う、という、淡々としながらも奥深く、リアリティーを感じさせながらも、不思議なロマンティックさに彩られています。
 それでは、1編ずつ、簡単に感想を。

「心の森に花の咲く」 冒頭に、いきなりの大トリという、おもしろい構成。15歳の大吉(表紙の少年)は、自称詩人の城北広樹のボロアパートに転がりこみます。さらに、自称作家の夜来狂一、父を探しに上京してきた少女マリも同居することになり……。マリとその父は悲劇的な結末を迎えますが、ラストは全員が一緒に……というところが、何となく胸にジンと来ます。
「丘の上のホロ」 偶然なのか、妙にちばてつやの絵と似ているのが、気になります。少年につかの間、訪れた、少女との触れ合い。ラストで、ホロが淡々としていたのが、意外でした。
「虹」 ハイミナールを飲んだ水上青年が出会った少女。甘い夢と、むごい現実。虹のような心の交流が、空しくも悲しい。
「マドンナの宝石」 ある刑事が9年前に出会い、行方知れずになった少女と、思いがけない再会を果たします。無情と思われたその女は……。女の涙に、私もドキッとしてしまいました。
「人形劇」 劇中のセリフにかこつけて、秘められた思いを告白する青年。明るくポジティブな女性の言動に、その返答が隠されていますが、これは悲しむべきこと? 意味深なお話です。
「雪ん子」 雪ん子が、ピュアでかわいい!
「風っ子」 上記と似たタイトルですが、こちらはもっと、ドロドロ感があります。風っ子と蔑まれ、厄介者扱いされていたキイチは、罪を犯した? 切ない結末です。
「源太とおっかあ」 タイトルだけ読むと、少年と母親のようですが、実は、源太少年と、おっかあというあだ名の、山の主のような真っ白い野生馬との交流のお話。源太の父は猟師として、おっかあを倒すように命じますが、源太は美しくて強いおっかあに強く惹かれ、仲良くなります。しかし、風邪? から回復した源太は、おっかあと悲しい別れを察して、号泣するものの……。民話や伝説によくある結末と思わせて、もっと夢も希望も感じさせます。私の一番のお気に入りです。それでは。

 

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