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2021年12月18日 (土)

『傳説と奇談』全18集(山田書院)の感想

 書籍、それとも、豪華版雑誌と呼ぶべきか、『傳説と奇談』全18集(山田書院)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 何と、発行年度が昭和38~40年という、半世紀以上前の、カラー写真や折り込み色絵、白黒写真つき、A4サイズ版の本です。
 ページ数は、80ページ(第17集 元禄忠臣蔵)がもっとも少なくて、最大は142ページ(第18集 旅と伝説)、他はおおよそ112ページで、かなり厚めの本文紙が使われております。2か月間、通勤と昼食の合間に読んでおりましたが、なかなかの重さです。
 これは本のせいではないのですが、経年劣化で、残念ながら、カラー写真は、もやっとした、妙な色合いです。
 そして、18集の内訳は、次のとおり。

 第1集 東京篇/第2集 近畿篇 1/第3集 伊豆・東海篇/第4集 関東篇/第5集 四国・山陽篇/第6集 近畿篇 2/第7集 九州篇/第8集 東北・北海道篇/第9集 北陸・近畿篇/第10集 中部篇/第11集 中国・近畿篇/第12集 中部・北陸篇/第13集 東北・関東篇/第14集 総合篇 1/第15集 総合篇 2/第16集 特別号 城と古戦場/第17集 特別号 元禄忠臣蔵/第18集 特別号 旅と伝説

 はーっ、ただ文字を打つだけでも、大変ですわ。
 日本各地の『傳説と奇談』を集め、掲載した本というわけで、大いに期待が持てるでしょう?
 これで、私の日本史&地理ダメっぷりも改善されるかなあと、浮き浮きしながら、読み始めたわけですよ。
 そして、2か月かかって読了した今。
 現在も、この出版社と、編集や執筆に関わった方が、この辺境(偏狭)ブログに訪問されることがあるでしょうか?
 あいにく、批判的なことを書きますので、どうぞ、ご了承ください。

1)編集が雑。
 これはもう、細かい部分で言えば、校正ミスから、大きな部分では、本としての編集まで。後半の本は、取りこぼしの伝説と奇談を、大慌てで載せた、という感じがしてなりませぬ。
 伝説や奇談の舞台になった写真は、同じようなアングルの遠景ばかりで、撮る意味があったのでしょうか?
 取り上げたお話も、時局上、奄美と沖縄がまったくなかったのは、やむを得ないかと思いますが、たとえば、戦国大名では斎藤道三がくわしく説明されていたのに、宇喜多直家、松永久秀の扱いは小さいですし、いわゆるメジャーばかりなのでは?

2)失礼ながら、お話は本当に研究したのでしょうか?
 第5集の傾城阿波の鳴門、そんなストーリーだっけ? 私の記憶違いかと思って、調べてみたのですが、やはり、異なるお話でした。どうして、こんなことに?

 以上、非常に辛辣なことを申し上げました。もしかしたら、有名な本なのかもしれませんが、研究される分にはお勧めできません。
 よい点としては、やはり、たくさんのことを知るきっかけを与えてくれたことです
「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで……」と、私は朝風呂の時に歌いますし、春でなくとも、「春雨じゃ。濡れて行こう」と、つぶやいて、雨宿りせずにずぶ濡れになったりもしますが、それらのいわれを今まで、まったく知りませんでした。せいぜい、祖母やおばと一緒に見た劇のセリフかなあ、程度でしたが。
 有名な文句、舞台、エピソードがあったのですね。本当に、恥ずかしい!
 一番興味深かったのは、第5集の連歌師、宗鑑、狸達のお話、日柳燕石ですね。
 あと、おもしろいというより、腹立たしかったのが、忠臣蔵。どこが痛快な仇討ですと? 大勢が一人の老人を寄ってたかって襲い、斬首するなんて、これはあんまりむごすぎるとしか、思えませぬ。
 それにしても、編集者様の故意ではないでしょうが、お話の結末としての、自決というか、自殺の割合が高いこと。現在でも世界的に自殺者の多い日本の、悪い部分も見たような思いでした。
 マニアックなお話として、お勧めできます。掲載されている浮世絵も、月岡芳年がもっとも多く、イラストは伊藤晴雨で、実に美麗です。それでは。

 

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