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2022年1月に作成された記事

2022年1月29日 (土)

『蠅の帝国 軍医たちの黙示録』(帚木蓬生・新潮文庫)の感想

 短編小説集『蠅の帝国 軍医たちの黙示録』(帚木蓬生・新潮文庫)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 こちらは、太平洋戦争とその後における、それぞれ異なる場所を舞台にしている、軍医たちを主人公にした(すべて一人称)、15本が収録された短編小説集です。
 正直言って、どれもこれも、「戦争は怖い、駄目だ」という一般認識が軽薄に感じられてしまうほど、むごたらしい内容です。
 もちろん、激戦地における一般兵士の運命の残酷さ、かけがえのないはずの命のもろさゆえなのですが、何よりも。
 軍医という、一応最前線には立たなくてよくても(士官扱いだから、平和時には、二等兵などより優遇されています)、負傷兵の数が多すぎる上、医薬品や食料が不足し、救えるはずの命が呆気なく失われ、栄養失調で死ぬ兵士を横目で見、移動や部隊の安全確保のため、遺体の回収さえできず、昼夜を問わず働いて、自分の命さえ危うくなって……という悲惨さが繰り返し描かれ、読んでいて、何度も本を置いてしまいました。
 少なくとも、私は、太平洋戦争を、大昔の出来事として扱ったり、「昔の人は偉かった」「多くの尊い犠牲のおかげで、今の日本がある」と、賛美したりするのは、間違っていると思います。
 なぜ、あの戦争は起きたのか。
   防ぎようがなかったのか。
 真に責められべき、反省すべき点は何なのか。
 戦勝国に対して、本当に糾弾しなくてよいのか。
 このようなことを、今後とも、考えていくつもりです。

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2022年1月23日 (日)

『黄色い涙』(永島慎二・マガジンハウス)の感想

 コミック『黄色い涙』(永島慎二・マガジンハウス)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 事前に申し上げますが、私は嵐主演の同名映画のことを、全然知りません。よって、この原作とどのような相違点があるのかもわかりませんので、ご了承ください。
 あらすじは次のとおり。

 阿佐ヶ谷の村岡栄の三帖の部屋に どこからともなく集まって来た若者たち
 つぐ マコ アー セキ……
 赤貧洗うがごとし ともに若さだけが売りもののスカンピーン集団……
 村岡がマンガ家のアシスタントとして かせぎに出かけたあと…
 部屋の中で ただねてまつのみ

「冬の恋」冒頭のナレーションっぽい文章を、丸写しさせていただきましたが、まさにこのとおり。
 作品は、第何話という区分はありませんが、すべてサブタイトルがついていて、「小さな城」から始まって、「春告鳥」で終わる、全11話のお話です。各話は、緩くつながっていますが、ほぼ独立した内容です。
 上記に挙げた若者たちは、全員、恐らく二十代(若くても十代後半)で、主人公の村岡は、セミプロのマンガ家ですが、他は、小説家、画家などになる夢を抱きながらも、夢は熱く語りますが、特に何もしておりません。
 このあたりは、私としては読んでいて、ひどくイラつきまして、「この本、リサイクルに出してやろうか」と、思いましたが、後半の「シェンシェイの場合」で、病気で寝ついた村岡を、他の全員が助け、介抱したので、かなり見直しました。

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2022年1月16日 (日)

『影御前 水神の宮』『影御前 刀剣奇譚』(小林薫・朝日新聞出版)の感想

 コミック『影御前 水神の宮』『影御前 刀剣奇譚』(小林薫・朝日新聞出版)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 

 影御前シリーズも、第3、第4となりました。どちらも、短編6話と、描き下ろしのあとがきがつく構成です。やはり、怖いというより(怖いシーン皆無というわけではありませぬ、念のため)、何とも不思議、神秘的、時には、しみじみと感動する読後感のものが多かったですね。
 それでは、まず、『影御前 水神の宮』から参りましょう。
 第14話「水神の宮」は、厳島神社お参りのお話。ここで、何と、伊勢神宮で出会った神様と再会! 偶然? 何でも、私の霊感のある友人が言うには、「神様は独立しているけれども、孤立していない」とのことでした。しかも、伊勢との意外な共通点には、平清盛が? 私も一度、お参りしてみたいです。
 第15話、桐生さんの霊感ルーツというか、お祖母さんのお話。後半、優しい人柄同士の交流が、心温まります。
 第16話、出雲大社のお話。時空をも揺るがし、桐生さんばかりか、霊感のないはずの作者様をも、一時的に体調不良にした原因は、悪いものではなく、古代からの、壮大な……。こちらも、お参りしてみたいですなあ。
 第17話、後半の作者様の言動に、私はちと、目頭が熱くなってしまいました。ただ、心をこめて、亡くなった人とお別れすればいいのですね。
 第18話、何と、御前が、どこかへ。作者様のパワーチャージのため、桐生さんがスカイツリーや東京タワーに誘いますが、そこにはどちらも、巨大で不思議な存在に守られていた、という。私は、そういうものに興味があるので、ちと、うらやましくなりました。

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2022年1月10日 (月)

『影御前』『影御前 失われた川』(小林薫・朝日新聞出版)の感想

 コミック『影御前』『影御前 失われた川』(小林薫・朝日新聞出版)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 このシリーズは4冊あって、私はすべて読了していたのですが、こちらにまだアップしていなかったみたいですね。すみませぬ。
 そこで、まず、№1と№2の感想について申し上げます。

『影御前』は2009年、『失われた川』は2012年の発行です。前者は短編7話、後者は6話が収録されていて、登場人物は作者様と、そのアシスタントで本業が小説家の(仮名)桐生仁美さん、そして、作者様の守護霊であり、自然霊(これは割と特殊だそうで)の、白拍子の姿をした通称「影御前」。桐生さんと影御前が、作者様の霊的ピンチを助けたり、助言したり、はたまた、一緒に行動して……というもの。どれからでも読める、親切仕様です。
 いただけない点は、私的に、特にないのですが、摩訶不思議、時には感動するエピソードもあって、味わい深い反面、「身の毛もよだつ怖さ」という意味では、少々物足りないかも?
 ちょっと怖い、ドキッとする場面はありますよ。でも、怖くて眠れないほどではないですね。
 なので、あらゆる恐怖漫画が受け付けられない方と、背筋が凍るようなお話が読みたい方には、不向きかと思います。

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2022年1月 8日 (土)

『隠れ貧困』(荻原博子・朝日新書)の感想

『隠れ貧困』(荻原博子・朝日新書)の感想を申します。ネタバレが含まれていますが、私ごときの文章から推測して、実践するのは不可能ですよ。
 サブタイトルは、「中流以上でも破綻する危ない家計」です。朝日新聞出版ですから、この名前だけで、拒否反応を起こされる方もいらっしゃるでしょうけれども。
 何だか、ある意味、呪われた心霊実話やうさん臭いスピリチュアルなんぞ、裸足で逃げ出すほど、怖い、恐ろしい、でも考えざるを得ない、直視しなればならない、そういうエピソード満載でした。
 そもそも、「隠れ貧困」とは、収入が少なくて貧しいという、通常の貧困ではなく、安定した高収入を得ているのに、日々の生活がかつかつだったり、貯金が極めて少なく、将来の老後の生活が危ぶまれたりしているという状態のことです。
 もちろん、家族の誰かがギャンブラーで浪費しているのではなく、一生懸命働き、子供達も勉強に励んでいるにも関わらず、貧困状態から抜け出せないという異常(非常?)事態なのですが、この隠れ貧困が日本で増えているそうです。
 構成としては、第1~4章で、「隠れ貧困」の実態を、資料といくつかの家庭のケースを挙げて、具体的に示されています。第5章以降は、隠れ貧困対策として、Q&A方式で、作者様が答えていて、参考になりました。

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2022年1月 3日 (月)

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(川上和人・技術評論社)の感想

 書籍『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(川上和人・技術評論社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 いやぁ、ビッグイシューで紹介されていたのを思い出し、ようやく読了したのですが。
 小説よりも、科学、評論系が、ある意味、おもしろいと、わかってはおりましたけれども。
 何だか、ちょっとしたSFというか、古代ファンタジーを読んだような気分になれました。

 あらすじというか、内容としては、鳥類学者の作者様が、「恐竜は鳥類の先祖である」という前提のもとに、発掘される化石のこと、そもそも、恐竜とはどのようなものか、鳥類と恐竜の共通点と相違点、鳥類から推測される恐竜の生態(ここが私的に一番おもしろい)等々と、スムーズに論理が展開され、興味深く読めました。

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2022年1月 1日 (土)

2022年の目標

 明けましておめでとうございます。
 今年も何卒、この辺境(偏狭)ブログと、餓狼MOWというゲームメインに同人誌活動を行なっている、フリーライターで看護助手でもある主婦、紅林真緒をよろしくお願いいたします。

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