『黄色い涙』(永島慎二・マガジンハウス)の感想
コミック『黄色い涙』(永島慎二・マガジンハウス)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
事前に申し上げますが、私は嵐主演の同名映画のことを、全然知りません。よって、この原作とどのような相違点があるのかもわかりませんので、ご了承ください。
あらすじは次のとおり。
阿佐ヶ谷の村岡栄の三帖の部屋に どこからともなく集まって来た若者たち
つぐ マコ アー セキ……
赤貧洗うがごとし ともに若さだけが売りもののスカンピーン集団……
村岡がマンガ家のアシスタントとして かせぎに出かけたあと…
部屋の中で ただねてまつのみ
「冬の恋」冒頭のナレーションっぽい文章を、丸写しさせていただきましたが、まさにこのとおり。
作品は、第何話という区分はありませんが、すべてサブタイトルがついていて、「小さな城」から始まって、「春告鳥」で終わる、全11話のお話です。各話は、緩くつながっていますが、ほぼ独立した内容です。
上記に挙げた若者たちは、全員、恐らく二十代(若くても十代後半)で、主人公の村岡は、セミプロのマンガ家ですが、他は、小説家、画家などになる夢を抱きながらも、夢は熱く語りますが、特に何もしておりません。
このあたりは、私としては読んでいて、ひどくイラつきまして、「この本、リサイクルに出してやろうか」と、思いましたが、後半の「シェンシェイの場合」で、病気で寝ついた村岡を、他の全員が助け、介抱したので、かなり見直しました。
例によって、このお話のいただけない部分から挙げますが、村岡の押しかけ弟子になった、トクヒロという青年の言葉遣いが、いちいち、面倒です。「シェンシェイ」「でしゅ」とか、こんななまり方はあるのでしょうかね。
それから、彼らは、ギャンブルで大金を稼ごうとしたり(うまくいくはずない!)、好きな女性や元カノが現われたりするのですが、ことごとく、うまくいきません。青春漫画の定番の流れかもしれませんが、何だか、もやもやします。
最後に(ごめんなさい、多くて)、私は今まで、いくつか永島慎二作品を読んできましたが、女性は、パワフルなおかみさんを除けば、純粋で清楚で、妙に遠回しで思わせぶりな言動をし、たまに、心が病んでいる美人(今のところ、不美人はいない!)ばかり。つまらないですな。
しかしながら、スカンピーンな彼らですが、近所の喫茶店によくコーヒーを飲みに行くあたり、今の令和の若者の方が、金銭的に追い詰められているようで、辛くなりました。
そして、村岡を含め、彼らの、夢に対するひたむきさはあっても、どのようにすべきか、何からなすべきかわからず、部屋でぼんやりと座りこんでしまう。それでも、華やかな世界にあこがれ、海水浴もやってみますが、失敗してしまう。そんなエネルギーは有り余っているのに、思いは空回りという、空気感、焦燥、傷心は、実に巧みに表現されていました。
本当に、私は、漫画ではなく、純文学を読んでいるような、純文学を漫画化した作品を読んでいるような気分になれましたよ。
金銭感覚等、やはり、時代が違うこともありますが、リアルな雰囲気を描いている点、名作だと思いました。それでは。
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