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2022年1月 8日 (土)

『隠れ貧困』(荻原博子・朝日新書)の感想

『隠れ貧困』(荻原博子・朝日新書)の感想を申します。ネタバレが含まれていますが、私ごときの文章から推測して、実践するのは不可能ですよ。
 サブタイトルは、「中流以上でも破綻する危ない家計」です。朝日新聞出版ですから、この名前だけで、拒否反応を起こされる方もいらっしゃるでしょうけれども。
 何だか、ある意味、呪われた心霊実話やうさん臭いスピリチュアルなんぞ、裸足で逃げ出すほど、怖い、恐ろしい、でも考えざるを得ない、直視しなればならない、そういうエピソード満載でした。
 そもそも、「隠れ貧困」とは、収入が少なくて貧しいという、通常の貧困ではなく、安定した高収入を得ているのに、日々の生活がかつかつだったり、貯金が極めて少なく、将来の老後の生活が危ぶまれたりしているという状態のことです。
 もちろん、家族の誰かがギャンブラーで浪費しているのではなく、一生懸命働き、子供達も勉強に励んでいるにも関わらず、貧困状態から抜け出せないという異常(非常?)事態なのですが、この隠れ貧困が日本で増えているそうです。
 構成としては、第1~4章で、「隠れ貧困」の実態を、資料といくつかの家庭のケースを挙げて、具体的に示されています。第5章以降は、隠れ貧困対策として、Q&A方式で、作者様が答えていて、参考になりました。

 そりゃあ、私は子供なしで共働きで、住宅ローンも返済できましたから、一応、隠れ貧困ではないようです。けれども、隠れ貧困におちいる原因の一つ、親の介護と老後の生活が控えていますから、有り余るお金を持っている人を除いて、完全に危険のない人はいないでしょう。
 年収800万円なのに、貯金ゼロ。年収850万円の家計でありながら、実家の母親の資金4000万円を使い尽くしても、なおも足りず、その年金をあてにしている一家。定年は65歳までだけれども、70歳まで住宅ローンを払い続けなければならず、頼みの綱の退職金も失いかねない危険など。
 後半の、作者様からのアドバイスには、本当に安心させられました。
 ただ、この本は2016年の発行なので、データは最新ではありませぬ(現状は、もっと悪いのかな?)。
 また、本当に貧しくて困窮されている方には、頼れる方法や団体名を取り上げておられますが、一刻を争う事態には不向きかと思います。
 しかしながら、作者様はよくある投資を勧めるような、銀行やFPではないので、信用できる方ではないでしょうか。
 私はこの本の中の、仮名・林田奈緒子さんの隠れ貧困のケースが、もっとも胸にせまりました。
 一見、夫の高収入に頼りきり、子供達にいい学校に行かせ、自分では働こうとしない見栄っ張りの、ひどい主婦のようですが、彼女にそんな狂った価値観を与えたのは、バブル経済時代の高額、贅沢バンザイ、金持ちの私ってすごい、という風潮だったわけです。
 時代の流れに乗るのも大事ですが、狂わされる、踊らされるのは、私としては、もうごめんです。
 私の近所のフリーペーパーに、安全簡単な投資セミナーの広告が毎月のように載せられていて、ホテル貸し切りの部屋で、飲み物とお菓子付きで学べるそうで、バブルの残り香がします。
 これも政府やらが勧めているのではないかと、私は疑っておりまして、マイナンバーカードもキャッシュレス決済も、今のところは、やっておりませぬ。
 が、この本、「給料が減った、税金が増えた」という、くわしいデータが載っていますが、そのようにさせたのは政府であることに、言及していませんね。その点は残念ですが、金銭面に少しでも不安のある方、特に40代、50代の方にお勧めいたします。それでは。

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