『チャタレイ夫人の恋人』(原作:D・H・ロレンス 川崎三枝子 世界文化社)の感想
コミック『チャタレイ夫人の恋人』(原作:D・H・ロレンス 川崎三枝子 世界文化社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
こちらは、「マンガ世界の文学」というシリーズの3巻目です。名高い女性漫画家様達が、有名な文学を漫画化しておられますが、私が川崎三枝子に注目していることと、同タイトルの小説は未読であることからして、読んでみました。
あらすじは、チャタレイ夫人ことコニイは、新婚間もない身でありながら、夫のクリフォドが第一次世界大戦によって立てなくなってしまう不運に見舞われます。コニイは懸命に、夫に仕えますが、クリフォドは小説の執筆と炭鉱経営に熱中し、体以上に心を触れ合わせようとしません。
孤独と空しさに苦しむコニイは、森番のメラーズと知り合い、かいま見た彼の裸体の美しさもあって、興味を持ちます。メラーズもまた、不幸な結婚をしていたため、最初はコニイを拒否しますが、やがて彼女に同情し、二人は結ばれます。
コニイは自身に新しい命のきざしを感じて歓喜するあまり、メラーズを遠ざけてしまいます。動転し、彼女の心変わりを疑うメラーズ。間もなく、二人の関係はクリフォドの知るところとなり、「離婚はしない」と、彼は言い放つのでした。
後半は、コニイとメラーズ、クリフォド、さらにメラーズとその妻、コニイと、私の大好きな、ダブル三角関係が発生するのですが、あっさり決着がついたのは、少し拍子抜けしましたね。要するに、最後に愛は勝つ、ということでしょうか。
後味はいいお話です。妙なギャグに走ることもなく、メラーズもコニイも、実にいいお尻をしております(笑、ではなく、本当に)。あらすじでは省略しましたが、コニイとメラーズの大胆な場面もありますので、愛の物語にヌードは好かない、という方を除けば、ほどよく大人で、美しい性愛の物語として楽しめます。
私は一応、原作の簡単な筋は知っておりましたが、性の描写でなく、クリフォドから繰り返し語られる、上流階級と、メラーズのような庶民は、天地ほども異なる、人間的にも前者が優れているという説には、驚かされました。
はい、私も庶民ですから、大いに不快です。だから、クリフォド、ざまあと思う反面、新妻と距離を置かざるを得ない、彼の憂鬱に、やや哀れんでしまいます。
さらに、これも、あらすじで省略しました、クリフォドの身の回りの世話をするボルトン夫人は、一見、彼の味方のようですが、コニイに助言もする、器の大きさも感じさせました。
原作はもう読まなくてもいいかと思いますが、この作品はお勧めいたします。それでは。
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