『一角散』(津野裕子・青林工藝舎)の感想
コミック『一角散』(津野裕子・青林工藝舎)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
こちらは、短編集です。掲載されている作品は、次のとおり。
「救命一角散」「turbidity」「トランス・トランス」「こうもり」「エリクシル」「双生児の窓」「流感の流行り」「ねこのゆくえ」
「百日紅白」「乙女椿」「ジェミニ 前編」「ジェミニ 後編」「ダム、スワン」「セルピエンテ・ドゥルミエンテ」「ゆーたん」
内容としましては、一応普通っぽい(いや、「セルピエンテ・ドゥルミエンテ」のヒロインは、かなり風変わりですが)少年や少女といった主人公が、ふとした好奇心に駆られたり、あるいは、前触れもなかったりという状況で、摩訶不思議な体験をする、というものです。かなり雑な説明で、すみませんが。
とはいうものの、どんでん返し、パワフルもしくはスリリングな展開ではない、どちらかというと、淡々と始まって、静かに終わる、といった雰囲気です。だから、そういうワクワクするストーリーがお好みの方には、不向きな漫画だと思います。
魅力は充分にあるのに、これまた、感想が伝えにくいですね。
ギリシア神話が引用されたり、一角獣が登場したりと、日常系ファンタジーと呼ぶべきでしょうか。それとも、日常系幻想譚?
たとえば、私達は、自分自身でなくとも、友人、もしくは友人の友人などの関係の中で、信じがたいような不可解な現象を体験、見聞しますけれども、そのような感じですね。
信じられないことが起こったが、日常は変わりなく続いていくのです。
その効果を盛り上げるのは、非常に精緻でリアルな描きこみです。あまりデフォルメのない、描き方です。
表紙からして、昔風の薬のパッケージと、古代ギリシア風の美人、一角獣が描かれた、実にきれいな絵です。
「救命一角散」、冒頭のお話からして、反則気味にすごいです。複雑な家庭に、本物の一角獣? と、その角があるのですからね。ヒロインかと思えば、女装した弟でした。そして、ヒロインは、どこへ行ってしまったのでしょうか。
「双生児の窓」、愛らしい双子の姉妹の正体に、驚かされました。しかも、「双生児の窓」は、実はエグイというか、怖いものなのです。
「百日紅白」、きれいな、さるすべりの花に、エロいイメージが重なります。
「ジェミニ 前編・後編」、最長のお話です。「双生児の窓」の双子姉妹が、明るく楽しく活躍します。
「セルピエンテ・ドゥルミエンテ」、タイトルの意味が、わかりませぬ。描き下ろし作品だそうで、へびっ子と呼ばれる少女の、痛々しい半生記です。
うまく感想を書けなくて、ごめんなさい。
しばらく手元に置いて、一コマごとの情景も、楽しめるように書くことができたならば、また異なる感じ方ができるように思われてなりませぬ。
本当に、不思議な読後感でした。お勧めいたします。それでは。
ご協力お願いします。
漫画・コミックランキング
| 固定リンク | 0
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 『どれが恋かがわからない』3巻(奥たまむし・KADOKAWA)の感想(2023.11.11)
- 『どれが恋かがわからない』2巻(奥たまむし・KADOKAWA)の感想(2023.11.04)
- 『鴻池剛と猫のぽんた ニャアアアン!』2,3巻(鴻池剛・KADOKAWA)の感想(2023.10.27)
- 『今日も殺せずに愛し合うだけ。』(原作:兎山もなか 漫画:嶋伏ろう 三交社)の感想(2023.10.15)
- 『強制除霊師・斎 屍人の聲』(監修:斎 小林薫 ぶんか社)の感想(2023.10.09)
コメント