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2022年2月14日 (月)

『一角散』(津野裕子・青林工藝舎)の感想

 コミック『一角散』(津野裕子・青林工藝舎)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 こちらは、短編集です。掲載されている作品は、次のとおり。

「救命一角散」「turbidity」「トランス・トランス」「こうもり」「エリクシル」「双生児の窓」「流感の流行り」「ねこのゆくえ」
「百日紅白」「乙女椿」「ジェミニ 前編」「ジェミニ 後編」「ダム、スワン」「セルピエンテ・ドゥルミエンテ」「ゆーたん」

 内容としましては、一応普通っぽい(いや、「セルピエンテ・ドゥルミエンテ」のヒロインは、かなり風変わりですが)少年や少女といった主人公が、ふとした好奇心に駆られたり、あるいは、前触れもなかったりという状況で、摩訶不思議な体験をする、というものです。かなり雑な説明で、すみませんが。
 とはいうものの、どんでん返し、パワフルもしくはスリリングな展開ではない、どちらかというと、淡々と始まって、静かに終わる、といった雰囲気です。だから、そういうワクワクするストーリーがお好みの方には、不向きな漫画だと思います。
 魅力は充分にあるのに、これまた、感想が伝えにくいですね。
 ギリシア神話が引用されたり、一角獣が登場したりと、日常系ファンタジーと呼ぶべきでしょうか。それとも、日常系幻想譚?
 たとえば、私達は、自分自身でなくとも、友人、もしくは友人の友人などの関係の中で、信じがたいような不可解な現象を体験、見聞しますけれども、そのような感じですね。
 信じられないことが起こったが、日常は変わりなく続いていくのです。
 その効果を盛り上げるのは、非常に精緻でリアルな描きこみです。あまりデフォルメのない、描き方です。
 表紙からして、昔風の薬のパッケージと、古代ギリシア風の美人、一角獣が描かれた、実にきれいな絵です。

 

「救命一角散」、冒頭のお話からして、反則気味にすごいです。複雑な家庭に、本物の一角獣? と、その角があるのですからね。ヒロインかと思えば、女装した弟でした。そして、ヒロインは、どこへ行ってしまったのでしょうか。
「双生児の窓」、愛らしい双子の姉妹の正体に、驚かされました。しかも、「双生児の窓」は、実はエグイというか、怖いものなのです。
「百日紅白」、きれいな、さるすべりの花に、エロいイメージが重なります。
「ジェミニ 前編・後編」、最長のお話です。「双生児の窓」の双子姉妹が、明るく楽しく活躍します。
「セルピエンテ・ドゥルミエンテ」、タイトルの意味が、わかりませぬ。描き下ろし作品だそうで、へびっ子と呼ばれる少女の、痛々しい半生記です。

 うまく感想を書けなくて、ごめんなさい。
 しばらく手元に置いて、一コマごとの情景も、楽しめるように書くことができたならば、また異なる感じ方ができるように思われてなりませぬ。 
本当に、不思議な読後感でした。お勧めいたします。それでは。


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