« 2022年3月 | トップページ | 2022年5月 »

2022年4月に作成された記事

2022年4月30日 (土)

『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想

 漫画『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 文庫版というのは、2000年発行の、表紙が第11話の一コマを拡大しているらしいもので、最初はこちらを読んでいたのですが、あまりに作画がよかったので、新装版を購入したというわけです。なお、2巻は未読です。
 文庫版の巻末では、釜石に出かけられた原作者様が、一人であるお店に入って食べたという体験記(釜石の石割り桜 あとがきにかえて)が載っています。お一人様あるあるのエピソードですね。一人で外食される経験のある方は、うなずけるし、こういうお店に入ってみたくなるでしょう。
 新装版では、何と、ラストの漫画で、主人公の井之頭五郎(職業は個人貿易商のようで)が入院してしまったという、新作が追加されています。味、ボリュームとも最悪と、一般的に言われている病院食を、彼はおいしく食べられるのでしょうか。それを楽しむコツがあるのは、憎いですね。
しかも、巻末は、作者様、作画担当様、川上弘美の三社鼎談つき。一方、文庫版にあった「釜石の石割り桜」がカットされています。私は結果的に、得をしたのかな?
 ドラマにもなった漫画だそうで、井之頭五郎が仕事の終わり、もしくは合間に、東京都内を中心に、関東地方、一度だけながら、大阪にまで出かけて、一心に食べる、その際のモノローグを描く漫画です。
 仕事ですから、井之頭はスマホでおいしい店を探す暇はありません。けれども、大変空腹な場合が多く、行き当たりばったりで、よさげな店に入ってみ、おいしそうなメニューを選びます。モノローグ中心なので、セリフは、ほぼ注文するだけで、周囲の人々がわやわや話す声も聞こえてきます。
 店、次にメニューを選択し、食べる。それだけのことなのに、「あれは失敗」「こっちの方が良かった」「これはいい」「もっと欲しい」など、食にこだわる、お一人様の内面は、ドラマチックな一人芝居のようです。
 もし、食べられるのなら何でもいいタイプの人なら、食事は、服の着替えのような日常雑務と同じようなものになるのでしょうね。←こういう感覚が得か損かは、人それぞれでしょうが。

続きを読む "『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想"

| | | コメント (0)

2022年4月29日 (金)

『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想

 小説短編集『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 通勤電車の中で読んでいる時、笑いをこらえるのに必死でした。ユニークな小説は少なくありませんが、本当に笑ってしまう、実に希少な内容です。
 収録されているのは、9本。そのうちの「ポッカァーン」のみ、ノンフィクションではないか? と疑われるほど、わかぎえふ、チチ松村と、実在される方が挙げられています。このお二人の特徴について描かれた説明にも、私は吹いてしまいましたよ。とにかく、作者様のふざけに巻きこまれた方々は、大変ですな。
「仔羊ドリー」、語り手の「おれ」と、もうひとり。SFかと思えば、ラストのオチで(笑)。
「黄色いセロファン」、小学生の少年の、ですます文体の語りで、エロいことが語られます。でも、私は、この主人公には引きますけどね。
「グラスの中の眼」、たちの悪い酒飲み男達と、義眼の物語。どんな関連があるの? と思われるでしょうが、やっぱり、とにかく、酒の飲みすぎは怖いというか、恐怖を通り越して、哲学的とも言えましょう。
「逐電」、「お父さんのバックドロップ」を連想しましたが、こちらのお話の方がシビア。アメリカに単身渡った日本プロレスラーが、無茶な相手(人間にあらず)と対戦させられます。日本のプロレス界の歴史にも触れており、興味深いです。

続きを読む "『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想"

| | | コメント (0)

2022年4月24日 (日)

『新九郎、奔る!』2、3巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想(追記)

『新九郎、奔る!』2、3巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を、追記にて申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 

 追記といっても、3巻のことです、すみませぬ。
 実は、3巻の終りに、『新左衛門、励む!』というタイトルの外伝が載っています。これは、新九郎の父、伊勢新左衛門盛定が須磨と結婚することによって、庶流の四男から出世の道が開けるようになり、周囲の期待に応え、自身も上りつめていくというもの。新九郎が生まれる以前のお話で、浅茅との出会いもあり、コメディ調です。
 たぶん、私の先祖は庶民だと思うのですが、いやはや、高位高官というか、権力者たりえるのは、大変です。クレープの立ち食いはもちろん、スタンドのコーヒーも飲めないし、同人誌即売会にだって行けませんぞ! メリットは、せいぜい、金持ちってことでしょうか? 庶民で良かったです。

続きを読む "『新九郎、奔る!』2、3巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想(追記)"

| | | コメント (0)

2022年4月23日 (土)

『新九郎、奔る!』2、3巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想

 漫画『新九郎、奔る!』2、3巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 実は、私生活でいろいろありまして、なぜか当たり前の文章が書けなくなっておりました。いつもにも増して、妙な感想になるやもしれませんが、リハビリのつもりでアップいたします。すみませぬ。
 この漫画の感想も、1巻から、ずいぶん間が開いてしまいました。理由は、私が読書スピードが遅いのと、あっちこっちと、好きな本が多くて、ふらふらしているためです。せめて、スピードアップしなければ。
 今年は、『鎌倉殿の13人』も視聴していることだし、もう一度、『新九郎奔る!』に挑戦してみようと、いうわけで読んでみました。
 おもしろかったですよ。登場人物が、くせ者まみれで(ほめています)。
 相変わらず、今川義忠がドライヤーを使っていたり、脳筋やキャラなどの当時、使われていなかった表現があったり(これらは、お口直しの冗談っぽい表現だと、私は思っております)、時代物にシビアな方々には、お勧めできませんが、おもしろければ良いのです!
 さて、あらすじとしては、2巻では応仁の乱が始まり、主人公の千代丸の母、浅茅が、伊勢貞藤の後妻に。千代丸は12歳で元服し、新九郎盛時となります。伊勢家の中心人物貞親、新九郎の父、盛定も京へ戻りますが、貞藤は謀反の疑いをかけられて逃れます。新九郎の兄、八郎は、今出川殿こと足利義視に同行して、これまた伊勢へ。一方、新九郎の姉、伊都が駿河の今川義忠へ輿入れすることが決まり、伊勢家は明るいムードになりますが、帰還した八郎の顔に、大きな傷が刻まれており、皆、絶句。
 3巻では、顔に傷あとのついた八郎は、今までとは打って変わって、今出川殿に忠誠を尽くすようになって、貞親らの忠告に耳を貸さず、激しく反発する始末。さらに、またもや比叡山へ出奔しようとする今出川殿に同行しようとした八郎は、伯父の盛景(父の兄)に、謀反の名目で惨殺されます。皮肉にも、伊都の輿入れの夜でした。涙ながらに、将来は伊勢家の主になることを決意する新九郎。
 え、「応仁の乱の要である、山名宗全と細川勝元、足利義政と義視の対立と、その流れについては、どうだ?」ですか? 確かに、今まで読んだ応仁の乱資料の中では、もっともわかりやすく描かれていますが、それでも、赤ちゃんの腰(ややこしい)! とにかく、2,3巻とも、山名が優勢かと思えば、細川が挽回し、足利義視が盛り返し……という感じの一進一退で、大変な事態なのです。

続きを読む "『新九郎、奔る!』2、3巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想"

| | | コメント (0)

2022年4月10日 (日)

『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』(中島らも・集英社文庫)の感想

『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』(中島らも・集英社文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 私はこの作者様の作品が好きなので、久しぶりに読んでみましたが、やっぱり、おもしろかったです。
 内容&あらすじを紹介いたしますと、作者様が、かの超有名進学校、灘校ですごした日々と、浪人時代、大阪芸術大学での生活をつづったエッセイです。
 しかしながら、時代は60年代後半から70年代で、学生運動が活発ですから、作者様ものんびりしていられません。
 トップクラスで灘高に入学したのに、個性的な学友と時代に翻弄されて、成績は、あれよあれよで、どん底に。
 浪人で勉強どころか、怪しげな喫茶店に入り浸り。
 入学できる大学がないと、慌てて、大阪芸術大学にすべりこんだはいいけれども、やりたいことが見つからない、奇妙な不完全燃焼状態になりながらも、学生結婚をし、辛うじて就職、というところで終わっています。
「あとがき」で、作者様が述べておられるとおり、この作品は、前半の大笑いしそうな奇想天外な明るさが、後半、なぜ? と、首をかしげたくなるほど暗く、深刻な雰囲気になります。
 いわゆる学生時代というのは、明るく楽しく、思い出深いはずなのに。「モラトリアムの闇」という、1~7まで続く長い章で、その悶々とした心の内が語られています。

続きを読む "『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』(中島らも・集英社文庫)の感想"

| | | コメント (0)

2022年4月 3日 (日)

『「やっかいな人」から身を守る85のコツ』(植西聰・電波社)の感想

 書籍『「やっかいな人」から身を守る85のコツ』(植西聰・電波社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 また、今回、辛辣な感想なので、作者様やそのファンの方は、お勧めできません。

 このタイトルの本を選んで読んだ私には、もちろん、職場の人間関係で悩んでいるからです。
 いくらか参考になるか、あるいは、解決になるかと思って、読み始めましたが。
 残念ながら、期待外れに終わりました。
 その理由については、後で申し上げます。
 内容というか、あらすじ的には、職場によくいる13タイプの困った性格の人々に対して、どのような心持ち、対処法でいるべきかを、見開き2ページごとに1項目で説明されています。
 難解な専門用語は、ありませんでしたし、一文ごとに改行されているため、すいすい読めて、わかりやすいです。
 200ページ越えの割に、早く読めますし、恐らく、トラブルの種になる人の性格をほぼ網羅しているのではないかと思います。

続きを読む "『「やっかいな人」から身を守る85のコツ』(植西聰・電波社)の感想"

| | | コメント (0)

« 2022年3月 | トップページ | 2022年5月 »