« 『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想 | トップページ | 『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想(追記) »

2022年4月30日 (土)

『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想

 漫画『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 文庫版というのは、2000年発行の、表紙が第11話の一コマを拡大しているらしいもので、最初はこちらを読んでいたのですが、あまりに作画がよかったので、新装版を購入したというわけです。なお、2巻は未読です。
 文庫版の巻末では、釜石に出かけられた原作者様が、一人であるお店に入って食べたという体験記(釜石の石割り桜 あとがきにかえて)が載っています。お一人様あるあるのエピソードですね。一人で外食される経験のある方は、うなずけるし、こういうお店に入ってみたくなるでしょう。
 新装版では、何と、ラストの漫画で、主人公の井之頭五郎(職業は個人貿易商のようで)が入院してしまったという、新作が追加されています。味、ボリュームとも最悪と、一般的に言われている病院食を、彼はおいしく食べられるのでしょうか。それを楽しむコツがあるのは、憎いですね。
しかも、巻末は、作者様、作画担当様、川上弘美の三社鼎談つき。一方、文庫版にあった「釜石の石割り桜」がカットされています。私は結果的に、得をしたのかな?
 ドラマにもなった漫画だそうで、井之頭五郎が仕事の終わり、もしくは合間に、東京都内を中心に、関東地方、一度だけながら、大阪にまで出かけて、一心に食べる、その際のモノローグを描く漫画です。
 仕事ですから、井之頭はスマホでおいしい店を探す暇はありません。けれども、大変空腹な場合が多く、行き当たりばったりで、よさげな店に入ってみ、おいしそうなメニューを選びます。モノローグ中心なので、セリフは、ほぼ注文するだけで、周囲の人々がわやわや話す声も聞こえてきます。
 店、次にメニューを選択し、食べる。それだけのことなのに、「あれは失敗」「こっちの方が良かった」「これはいい」「もっと欲しい」など、食にこだわる、お一人様の内面は、ドラマチックな一人芝居のようです。
 もし、食べられるのなら何でもいいタイプの人なら、食事は、服の着替えのような日常雑務と同じようなものになるのでしょうね。←こういう感覚が得か損かは、人それぞれでしょうが。

 ともあれ、私はただの食いしん坊の一人だと卑下していたのですが、好き嫌いや計算、最大のおいしさを味わうには、何を食べようかと、食事の度に懸命に考えていたのだと思って、目から鱗が落ちると同時に、もっと食にこだわってみようと思いました。
 一話完結スタイルですが、時折、食事とは別個の、井之頭の過去、あるいは食に対する美意識が現われており、彼は見かけ上、真面目そうな男性としか思えないのに、なかなか頑固で欲張りなところがあって、私は親近感を持ちました。
 井之頭は酒は飲めませんが、クレーマーでなく、第7話の大阪では、初対面でも距離が近すぎる大阪人と、会話もしますが(このエピソード、モブにすぎない大勢の人々を、それぞれ個性的に描いていて、劇の一場面のようでした。いわゆる神回)、第12話で客の目の前で、新人にねちっこくあたる主人に対して、「食は自由でなければいけない」と、苦情を言います。一人だと、事なかれ主義になりがちなのに、このエピソードで、私は彼を尊敬するようになりました。
 お酒の肴に近いお品は多いですが、飲酒シーンはありませんでしたね。喫茶系はなかったですが、甘味はあります。第3話で、井之頭が、やむなく豆かんを食べた瞬間の、生き返ったような表情は、お見事! 思わず、豆かんを探しに行きたくなります。ゆえに、私はもっと大ゴマで見たくなったのです。
 さて、2巻は、どうしましょうか。不足ではないのですが、私はしばらく、何度も読んでいたくなりました。お勧めいたします。それでは。

ご協力お願いします。

漫画・コミックランキング

| |

« 『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想 | トップページ | 『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想(追記) »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想 | トップページ | 『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想(追記) »