『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想
小説短編集『寝ずの番』(中島らも・講談社文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
通勤電車の中で読んでいる時、笑いをこらえるのに必死でした。ユニークな小説は少なくありませんが、本当に笑ってしまう、実に希少な内容です。
収録されているのは、9本。そのうちの「ポッカァーン」のみ、ノンフィクションではないか? と疑われるほど、わかぎえふ、チチ松村と、実在される方が挙げられています。このお二人の特徴について描かれた説明にも、私は吹いてしまいましたよ。とにかく、作者様のふざけに巻きこまれた方々は、大変ですな。
「仔羊ドリー」、語り手の「おれ」と、もうひとり。SFかと思えば、ラストのオチで(笑)。
「黄色いセロファン」、小学生の少年の、ですます文体の語りで、エロいことが語られます。でも、私は、この主人公には引きますけどね。
「グラスの中の眼」、たちの悪い酒飲み男達と、義眼の物語。どんな関連があるの? と思われるでしょうが、やっぱり、とにかく、酒の飲みすぎは怖いというか、恐怖を通り越して、哲学的とも言えましょう。
「逐電」、「お父さんのバックドロップ」を連想しましたが、こちらのお話の方がシビア。アメリカに単身渡った日本プロレスラーが、無茶な相手(人間にあらず)と対戦させられます。日本のプロレス界の歴史にも触れており、興味深いです。
「寝ずの番」、三部作です。この本のメインで、冒頭から、かっ飛ばしてくれます。最初は噺家の橋鶴、Ⅱでは一番弟子の橋次、Ⅲでは橋鶴の妻、志津子がそれぞれ死んで通夜となり(三部とも、すべてこの流れ!)、主人公の橋太(作中では「おれ」の一人称)や他の弟子達が酒を酌み交わしながら、故人のとんでもエピソードを語ります。しかし、Ⅲは、若い頃の志津子を橋鶴と奪い合った、かつての恋敵が登場し、橋太と艶笑歌合戦になってしまいます。まあ、その歌の下品で、リズミカルにいやらしいことといったら! ここで載せてしまいたいのですが、こちらかTwitterのアカウントが凍結されそうな、ものすごいもの。しかも、一つや二つどころではありませぬ。
批判しておりませんよ。私、思いっきり、ほめています。艶笑話とエロネタ好きの方に、全力でお勧めいたします。そうでない方は、どうぞ、お忘れになってください。それでは。
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