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2022年5月に作成された記事

2022年5月27日 (金)

『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想(追記)

 漫画『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想の追記を述べます。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 ちまちまアップして、申しわけありません。今回がラストです。
 私的に、一番インパクトのあった漫画について、ご紹介しておりませんでした。
 それは、「おせん」でも「彩雪に舞う……」でもなく、「茎」という前後編に分かれた作品です。
 あらすじとしては、恐らく江戸時代、染め物師を志す少女つむぎは、男衆の中に一人だけ混じって、辛い修行と仕事に明け暮れます。やがて、別の店で同様に染め物師になろうとしている民江、けんかっ早い青年と知り合います。が、間もなく、民江は結婚のため仕事をやめ、恋仲になった青年は、普通の結婚生活を希望していたたため、つむぎは別れを告げ、染め物を教える男衆からも、将来的に子守、洗濯、料理をするべきだと、敬遠されるのでした。
 物語が進むにつれて、孤立していくつむぎと裏腹に、彼女の弟は順調に、板前としての腕をあげていきます。そして、前後どちらにも描かれている場面ですが、幼い少女達も若い女性も、結婚することが人生の第一目標で、最大の幸せであるように、周囲から言われ、また本人達も信じている様子がリアルにして怖い。
 逆に、つむぎは、孤立は辛かろうに、いわゆる元彼になった青年を見かけても、昂然と頭を上げて歩んでいきます。これが、芯のある、「茎」のタイトルの理由でしょうか。

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2022年5月21日 (土)

『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想(続き)

 漫画作品集『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想の続き、参ります。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

「名刀」、火事か台風のような大災害の後、身分、年齢、性別ばらばらな老若男女が一カ所に集まります。その中に、名刀所持を誇りにする老武士がいましたが、ある少年は彼を小ばかにした態度を取り……。庶民が武士に勝った? 最初から、飛ばしてくれますね。

「ぼろぼろぼろ」、「自殺へのすすめ」というサブタイトルつきの、短期集中連載だったらしい、8回の続き物。主人公は、盲目になって9年の、あんまの享さん。時々、姉の世話をうけながらも、彼の周りは死の影がただよいます。生活に不自由はしないけれども、咳がひどくて、武士の誇りだけをよりどころにする田村は、罪のない浪人を斬殺し、酒乱気味の大工は自殺未遂から……。身体障害の差別的な表現もありますし、相当暗いお話です。それでも生きる、是が非でも生き続ける人もいれば、耐えきれない人もいる。どん底の人間の悲しさをうたっているのでしょうか。

「おせん」、これは漫画アンソロジー本でも読んだことのある、作者様の代表作です。貧乏だけれども、気立てがよくて明るいおせんは、大工の青年と恋仲になりますが、高額な花瓶を壊したことで、態度が豹変。青年は幻滅するものの、彼のおじは……。とにかく、花瓶を割る前までの、おせんの言動が愛らしいです。これまた、謎のラストです。おせんに救いがあるのでしょうか。二人はまた、結ばれるのでしょうか。私は、そうであってほしいと、願っていますが。

「蝶を見た!」、手代と大店の一人娘が駆け落ちをし、山奥で不自由ながらも、一緒に暮らし始めますが……。作者様には珍しく、色っぽい描写があるなあと思ったら、「原作:岩崎稔」とありました。

「しまい風呂」、現代物で、男湯の中で、おもしろおかしく話をする、公蔵や高石のエピソード。シンプル表現ながらも、男達の股間がバッチリ描かれています。色っぽくて笑える物語かと思いきや、ラストの人生の悲哀と孤独が、胸にしみます。しまい風呂とは、銭湯の営業終了間際の風呂ではなく、そういう意味だったのです。

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2022年5月15日 (日)

『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想

 漫画作品集『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 こちらは、何となく心惹かれて購入したものですが、品薄なのか、高額でした。読了した今、買ってよかったと、思っております。
 収録されている作品は、次のとおり。

 名刀
 おせん
 参加
 茎
 臨時ニュース
 大部屋
 達磨さん達磨さん睨めっこしましょ 笑うと負けよアップップッ!
 暮六ツ
 ふじが咲いた
 あらさのさぁー
 やすべえ
 蝶を見た!(原作:岩崎稔)
 ゴセの流れ
 しまい風呂
 ぼろぼろぼろ
 彩雪に舞う……

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2022年5月 4日 (水)

『貴婦人狩り』(笠間しろう・ソフトマジック)の感想

 漫画『貴婦人狩り』(笠間しろう・ソフトマジック)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 忌引き中なのですが、こちらを読んだのは、ずっと以前でした。このまま忘れてしまうかもしれませんので、アップします。
『貴婦人狩り』は、新官能劇画大全4にあたる短編集ですが、先に読んだ『淫獣の森』よりも、ダーク心理描写が多かったように思います。
 セックスに至る流れというのは、乳房やお尻、性器よりも、重要だと、私は考えておりますので、大いに参考になりましたが、読む人を選ぶ内容かもしれません。
 収録作品は、次のとおり。

 第一話 熱鬼の牙
 第二話 蜜楽の蟻地獄
 第三話 禁淫のテキスト
 第四話 妊娠秘儀
 第五話 密林の快楽狩り
 第六話 螺旋の恋人たち
 第七話 白肌の戯れ
 第八話 覗かれた夫婦
 第九話 美しき毛獣
 第十話 偽りの性粧

 

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2022年5月 3日 (火)

『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想(追記)

 漫画『孤独のグルメ』文庫版・新装版(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社)の感想の追記です。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 ところで、こちらは文庫も新装版も、1巻という表記がありませんが、最新版はちゃんと、印字されていると思います。
 いつもの私なら、文末に、「おもしろかったので、2巻も買いますよ」と、述べているところなのですが。
 実は、同じ原作者様の『花のズボラ飯』(『孤独のグルメ』の女性バージョンというより、自宅料理のお話ですね)で、1巻(これもまた、無印)は文句なしにおもしろかったのですが、2巻は、よくあるグルメ漫画になってしまい、拍子抜けしたことがあります。
『孤独のグルメ』もそうなるのではないかと、危ぶんでいるので、しばらく、1巻を読みまくって、充分に堪能してから、2巻の購入するかどうか、決めようと思っているわけです。

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