『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想(追記)
漫画『楠勝平作品集 彩雪に舞う……』(青林工藝舎)の感想の追記を述べます。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
ちまちまアップして、申しわけありません。今回がラストです。
私的に、一番インパクトのあった漫画について、ご紹介しておりませんでした。
それは、「おせん」でも「彩雪に舞う……」でもなく、「茎」という前後編に分かれた作品です。
あらすじとしては、恐らく江戸時代、染め物師を志す少女つむぎは、男衆の中に一人だけ混じって、辛い修行と仕事に明け暮れます。やがて、別の店で同様に染め物師になろうとしている民江、けんかっ早い青年と知り合います。が、間もなく、民江は結婚のため仕事をやめ、恋仲になった青年は、普通の結婚生活を希望していたたため、つむぎは別れを告げ、染め物を教える男衆からも、将来的に子守、洗濯、料理をするべきだと、敬遠されるのでした。
物語が進むにつれて、孤立していくつむぎと裏腹に、彼女の弟は順調に、板前としての腕をあげていきます。そして、前後どちらにも描かれている場面ですが、幼い少女達も若い女性も、結婚することが人生の第一目標で、最大の幸せであるように、周囲から言われ、また本人達も信じている様子がリアルにして怖い。
逆に、つむぎは、孤立は辛かろうに、いわゆる元彼になった青年を見かけても、昂然と頭を上げて歩んでいきます。これが、芯のある、「茎」のタイトルの理由でしょうか。
まさか、時代劇でフェミニズム漫画が読めるとは、思いませんでした。これは精神的土下座! 脱帽いたします。
女の幸せという美名で、いかに女性の才能や実力が、ないがしろにされているか、よくわかります。
しかし、つむぎは染め物師になるため、青年との恋をあきらめますが、恋愛はやめなくてもいいのでは? と、私は思いかけました。
が、あの時代、料理、洗濯などの家事は、今と違って、手間暇かかる大仕事。
庶民の少女では、仕事との両立は、相当困難でしょう。
つむぎの将来の見通しは、明るいものでないかもしれません。
それなのに、ラストは不思議と、不意打ちのような美に彩られています。
性格が似ているせいか、私は「おせん」の別の物語のようにも感じられました。
やはり、すばらしい才能を持った作家様です。お勧めいたします。それでは。
ご協力お願いします。
漫画・コミックランキング
| 固定リンク | 0
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 『新九郎、奔る!』10、11、12巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想(2023.01.29)
- 『新九郎、奔る!』10、11、12巻(ゆうきまさみ・小学館)のあらすじ(2023.01.28)
- 『挑戦者AAA(チャレンジャー トリプルエース)』(原作:梶原一騎 漫画:永島慎二 マンガショップ)の感想(2023.01.15)
- 『銀魂』第1話~第83話(空知英秋・集英社)の感想(2023.01.09)
- 『曲芸家族(サーカス ファミリー)全4巻』(みさき速・秋田書店)の感想(2023.01.02)
コメント