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2022年10月に作成された記事

2022年10月23日 (日)

『夢喰見聞』全9巻・『夢喰見聞 妄鏡堂』(真柴真 スクウェア・エニックス)の感想(追記)

 前回の感想は、ちと不親切仕様でしたので、追記いたします。
 私の一番気に入っている、作中の登場人物は、2巻の「第拾弐夜 獏」でデビューする、三角一二三(みすみ ひふみ)です。成金でまわりから高等遊民と呼ばれている、チャラい外見の青年で、霧霞に一目惚れして銀星館の下宿人になりました。一方的に蛭孤を恋のライバル認定して張り合いもしますが、人外の彼と普通に会話し、世話を焼くこともある、意外と面倒見が良くて常識人であるところがいい、と思います。
 それでは、お気に入りのお話をいくつか挙げます。

 第壱夜 下り階段(1巻)
 いわゆる一発目から、びっくり仰天のお話でした。一人きりで死んでいる「お嬢様」を思いやる、純粋な少年。彼の見る悪夢は不可解でしたが、彼自身も人でなく、名前さえもない存在だったという……。彼の願いはかなえられましたが、不思議な寂寥感が残りました。

 第伍夜 文字(1巻)
 作者様もお気に入りのお話だそうです。
 十年前、父を殺したのではないかと、悩む少年。寸前の記憶がなく、父の命日のたびに、現場だった蔵の中の物が、文字に変じてしまい、特に、父の字に押さえつけられて動けない。そのわけは……というお話。不気味なビジュアルに反して、心温まる結末だったのが、実に意外でした。他にも、ヒントになった鼠がかわいいです。

 

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2022年10月15日 (土)

『夢喰見聞』全9巻・『夢喰見聞 妄鏡堂』(真柴真 スクウェア・エニックス)の感想

 コミックス『夢喰見聞』全9巻とその外伝『夢喰見聞 妄鏡堂』(真柴真 スクウェア・エニックス)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 ジャンル的には、伝記というより、怪奇幻想でしょうか。いくつかの部分は首をひねりましたが、まず、おもしろく読めました。
 時代は大正末期で、舞台は関東大震災の記憶が生々しい帝都の一角にある、喫茶「銀星館」。そこを経営する少女、霧霞(みづき)とともにいる、悪夢を糧に生きる「獏(ばく)」の蛭孤(ひるこ)。一見、風変わりな少年の外見ながらも、悪夢に悩む来訪者の相談に応じて、その夢の中に入って解決し、代償として、悪夢を小さな玉状にしてもらい受け、食べてしまいます。依頼人は老若男女さまざまであるどころか、人でない存在もいますし、秘密の願望や恋、犯罪まであって、おどろおどろしい世界なのですが、蛭孤としては、「さあ眠れ しばし現(うつつ)にお別れだ」と、声をかけて依頼人を眠らせ。
「血染めの悪夢は 特に美味いんだ」
「尤も僕は悪夢を喰えるなら それに越した事ないけどね」
 などと、言うのでした。
 2巻以降、騒々しい下宿人、一二三、妄想に憑かれた者が訪れる妄鏡堂の主人の戒吏と使用人(?)のシマ、温厚そうな外見でありながら残忍な性格の獏の月白、霧霞の兄で先代の獏、梓など、個性的な人物達も加わっていきます。そして、蛭孤が人間だった頃の凄惨な過去と、彼が対峙する悪夢等々。
 ほぼ一話完結ですけれども、前後編にわたるお話もいくつかあり、最終の9巻は、蛭孤自身の悪夢をめぐって、蛭孤の過去を知っているらしい少女、神志名が現われ、月白、梓が暗躍するというもの。
 こうやって説明すると、まさに怪奇で猟奇、純愛であるかと思えば、皮肉な結末になることもありで、ストーリー的には、おもしろかったのですが。
 ただ、いくつかの点については、どうも納得できず、熱中できなかったのは事実です。そのことについて、次に挙げましょう。





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2022年10月10日 (月)

『信長の忍び』19巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『信長の忍び』19巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 もう19巻! なのですが、安定のおもしろさでした。何度も繰り返しているでしょうが、やっぱりすごい、すばらしい。
 あらすじとしては、戦国大名(織田信雄)VS忍びという、前代未聞の合戦、天正伊賀の乱が開戦されます。織田軍にも、柘植保重という、勇敢で忠実な重臣がおりましたが、11人の精鋭忍び達に苦戦した挙句、柘植は討死して敗退。千鳥さえも負傷します。
 次に、荒木村重が脱出した有岡城が落ち、黒田官兵衛は助けられました。けれども、荒木側の妻のだし他の家族、城兵、下人らが、信長によって無惨に処刑されます。
 さらに、10年間も敵対し続けてきた本願寺が、ついに降伏。ただし、息子の教如は頑強に反対していたため、顕如は彼を義絶しました。
 四か月後、教如がやむなく退出した後、その石山本願寺が放火か失火か、とにかく全焼してしまいます。その責任を取らされる形で(他にも19条の失態あり)、重臣の佐久間信盛が追放されます。
 有岡城関係者の処刑、佐久間他の三人の重臣叱責、追放といった信長の処断に、明智光秀は、一人ひそかに衝撃を受けていたのでした。ここで終わり。
 次は、第二次天正伊賀の乱に続くそうです。

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2022年10月 9日 (日)

『吉村昭の平家物語』(講談社文庫)の感想

『吉村昭の平家物語』(講談社文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 他に、注意事項として、今回の感想は、かなり辛辣です。日本文学と平家物語に強い思い入れがあって、それを批判するのは許せないという方は、絶対にお勧めできません。そのため、コメントは受け付けない設定にいたしました。ご了承ください。

 あらすじは、もう説明するまでもありませんね。
 私は学生時代、この平家物語の原書をテキストとして学習しましたが、どうにもこうにも退屈で、腹立たしくてなりませんでした。
 いい加減に内容もうろ覚えになっているし、名著として評判のいいこの本なら、きっと感動できるだろうと期待したのですが。
 駄目でした(泣)。
 それでは、いただけない点から参りましょう。

1.戦記物としてなら、超退屈。
 三国志演義や太平記の方が、はるかにおもしろいです。
 前者は、主人公のライバルさえ、何度も命の危機におちいりながら、復活しています。後者は、南朝寄りですが、どちら側にも人格者や問題ある人物、見事な策略を描いています。
 ところが、平家物語では、義経は奇襲ばかりだし、それならば、平家側にも対策があろうはずなのに、どちらも何をしていたのやら。

2.仏教を持ち出して、自殺を美化するな!
 壇ノ浦で、負けた平家側の入水なら、わかります。一族と自らの名を惜しみ、敵に捕らわれて、あざけられたくなかったからですよね。
 しかし、小宰相や維盛の脆弱さには、うんざりいたしました。
 念仏は、極楽へ向かうための方便ではありませぬ。

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2022年10月 1日 (土)

『現代漫画7 小島功集』(筑摩書房)の感想

 漫画書籍『現代漫画7 小島功集』(筑摩書房)の感想を申します。些細ながらネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 奥付の発行年月日が、1969年8月20日第一刷だそうで、かなり古い本です。そのせいか、作者様の現住所まで載っていますが、今ではこれ、アウトでしょうに、昭和は大雑把だったのですね。
 小島功とは、週刊誌に連載されていた『仙人部落』が有名ですが、要するに、以前に、黄桜の河童イラストと言えば、大半の方は思い出されるのではないでしょうか。
 掲載されている作品は、次のとおり。

 仙人部落
 俺たちゃライバルだ!
 あひるヶ丘77
 2コマテレビ
 日本のかあちゃん
 うちのヨメはん
 MY NAME ナツ子
 手品師のハンカチ
 7-8=1
 赤ずきん
 黒ねこどん

 他に、カラー絵、一枚絵漫画など。

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