« 2022年10月 | トップページ | 2022年12月 »

2022年11月に作成された記事

2022年11月26日 (土)

『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想(追記)

 コミック『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想の追記いたします。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 私はつい、かわいい絵柄に注目して見落としておりましたが、中心人物達は皆、一筋縄ではいかない性格と過去を持っております。
 たとえば、主人公の安男氏は、零戦パイロットになって成り上がりたい、つまり、大金をもうけて、大勢の女性とやり逃げしたいと、当初は希望していたのですが、表向きは日本男子として役立ちたいと、いい恰好をしておりました。コテコテの大阪人のはずだった逢坂は、裕福な実家に居場所がなく、家族は無関心(もっとも不幸な人物かも)。口数は普通ながらも無表情で、重要な質問を無視する悪癖の清水は、非常に家族思い、というわけです。
 私の一番のお気に入りキャラクターは、語り手の安男氏をおさえて、逢坂です! ストレートに安男氏にからむかと思えば、女子挺身隊の少女達をナンパしまくり(当然不成功)、浪費して空腹に苦しむと、おバカな面もありますが、特攻前のメッセージが泣かせます。
 

続きを読む "『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想(追記)"

| | | コメント (0)

2022年11月23日 (水)

『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想

 コミック『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 この漫画は、太平洋戦争体験系作品として、かなりの傑作だと、私は思います。以前にレビューした、『この世界の片隅に』と対角線上をなす、零戦操縦士ならぬ特攻するはずだった少年の、痛切な青春物語です。
 大学受験に失敗した作者様が、大分でコンビニを経営する祖父の安男氏の元へ転がりこみ、零戦に乗っていた頃のことを聞き、十三年後にその体験談を漫画化したというもの。
 通常なら、私は主人公を呼び捨てにしますが、実在された方ですので、今回は安男氏と書かせていただきます。
 あらすじとしては、農家の十一人兄弟の末っ子として生まれた安男氏は、ひたすら成り上がるため、零戦パイロットを目指します。海軍の予科練に合格、入学し、出水航空隊へ配属されるうち、コテコテの大阪人で先輩格の逢坂広、リーダーとなる清水茂と知り合い、三人で隊を組むことに。
 三人が厚木、千歳と異動し、昇格していくのと裏腹に、日本の戦況は急激に悪化。偵察に行ったサイパンとテニアンは米軍に制圧され、北方では仲間が撃墜され、フィリピンではついに、特攻命令が。予科練の知人で臆病者だった寺岡が、真っ先に志願して戦死。安男氏はマラリアにかかって寝ついた時、逢坂、清水が特攻へ。生き残った安男氏は帰国し、茂原でB29相手に戦うことに。けれども、東京大空襲は間に合わず、「絶対に次の出撃(特攻)で死ぬ」と、決心した安男氏ですが、敵機を見つけられないまま、空しく帰還。そうやって、玉音放送の後、涙にむせ返るのでした。

 それでは、まず、いただけない点から挙げますね。
1.良くも悪くも、かわいくてギャグタッチの絵。
 四コマ漫画風というのでしょうか。内容の重厚さ、深刻さに反比例しており、特に前半は、不謹慎な戦争コメディか? と、誤解されそうです。実際、私もそうでした。零戦コクピットの構造と登場人物の体格との比例も、あれ? という部分があり、かわいい絵柄とのミスマッチは、個性ともいえるのでしょうけれども。
2.少しだけですが、下ネタっぽい描写があります。
 ふんどしや、いわゆる、かっこ悪い姿ですね。
 

続きを読む "『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想"

| | | コメント (0)

2022年11月19日 (土)

『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子・青春出版社)の感想

 書籍『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子・青春出版社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 発行年度が昭和49年と、なかなか年季の入った本です。そして、「その人に(以下略)」が、サブタイトルっぽいのですが、恋愛論というよりも、歌手で小説家である作者様のエッセイです。
 それにしても、「前章1 女が忘れようとしている実感-何が得たいために生きるのか」「中章3 自己愛を持たない自分はダメになる-自分のためにどう考えればいいのか」等々、恋愛に悩む若い女性向けらしく、章タイトルも凝っていますが、やはり、作者様による等身大エッセイです。だから、恋や結婚に悩む方が読むには、拍子抜けするかもしれませぬ。
 でも、私は結構好きです、けれども。
  ↑
(称賛しているのか、批判しているのか、どっちなんだよ←自主ツッコミ)

続きを読む "『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子・青春出版社)の感想"

| | | コメント (0)

2022年11月 6日 (日)

『図説 日本戦陣作法事典』(笹間良彦・柏書房)の感想

 書籍『図説 日本戦陣作法事典』(笹間良彦・柏書房)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 これは、時代小説の構想や設定を練ったり、戦国時代の背景を考えたりするのに、非常に役立つ資料です。
 説明文はもちろん作者様でしょうが、詳細なイラストも、そうなのでしょうね。
 巻末の合戦用語集(文字ばかり)と八章の軍装(イラストメインで説明少々)を除けば、見開き右ページに説明、左ページが図画と、見やすく、目的の項目を探しやすい、親切構造です。
 だだ、例によっていただけない点を挙げましょう。
 合戦用語集ですが、三段組の細かい字で、使用例として現代語訳でなく、原文を取り上げられていますので、読み辛くて、退屈でした。よく読むと、なかなかおもしろい内容が多かったのですが、これは私の日頃の不勉強ゆえでもあります。
 もう一つ、第二章の着到。奈良時代、源平時代、小田原北条氏までは、すんなりと、興味深く読めます。けれども、「江戸幕府規定の着到「となりますと、二百石、三百石……三万石、四万石、五万石と、読んでいるというより、読む修行を強いられているような……。スケールが大きいこと、必ずしも石高の多さによって人馬や装備も増えていくものではないのは、充分にわかったから! と、私は心の中で叫んでしまいましたよ。
 しかし、難点はこのくらいで、この本は古代から続く、戦い、武士の戦を知る上で、大変参考になると思います。

続きを読む "『図説 日本戦陣作法事典』(笹間良彦・柏書房)の感想"

| | | コメント (0)

« 2022年10月 | トップページ | 2022年12月 »