『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子・青春出版社)の感想
書籍『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子・青春出版社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
発行年度が昭和49年と、なかなか年季の入った本です。そして、「その人に(以下略)」が、サブタイトルっぽいのですが、恋愛論というよりも、歌手で小説家である作者様のエッセイです。
それにしても、「前章1 女が忘れようとしている実感-何が得たいために生きるのか」「中章3 自己愛を持たない自分はダメになる-自分のためにどう考えればいいのか」等々、恋愛に悩む若い女性向けらしく、章タイトルも凝っていますが、やはり、作者様による等身大エッセイです。だから、恋や結婚に悩む方が読むには、拍子抜けするかもしれませぬ。
でも、私は結構好きです、けれども。
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(称賛しているのか、批判しているのか、どっちなんだよ←自主ツッコミ)
エッセイを好まれる方もいらしゃいますが、私は実は、それほど好きではありませぬ。
なぜなら、小説の名作よりも、よいエッセイというものに出会えないからです。
エッセイというより、年長の経験者による、若い人向けのアドバイスならぬ、超つまらない説教っぽい内容になっているものが大半のように思えて仕方がないのです。
この本は、そういうありがちな上から目線、偉そうな表現、若者への無用の批判がないので、いいなあと思います。
が、なぜ歌手から小説家を志したのか、作者様にとっての痛い恋愛は、なぜうまくいかなかったのか、下世話ながら大いに興味を引かれた件についてはオブラートに包まれた表現になっているので、そちらはマイナスです。
全体的には、いいエッセイだと、私は思います。
巻頭で、作者様の写真が載っており、大いに目を引きつけられ、それから、英文タイピストから歌手を目指した経緯が語られます。私はその冒頭と、最終章の、歌手としてメジャーになりきれず、失敗してだまされて、あがき続け、やがて小説を書き始める箇所は、とてもおもしろくて、後者は鳥肌が立ちそうになるほどでした。
恨みや怒りを、人間として跳躍するためのエネルギーに変える。これが芸術家というか、表現者としての本能なのでしょうね。また、この作家様の小説などを読んでみたいと思います。それでは。
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