『新九郎、奔る!』10、11、12巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想
コミック『新九郎、奔る!』10、11、12巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
最初に、いただけない点を挙げます。
事件が起こった時、それは西暦何年なのか、前のエピソードから、何ヶ月? 何年? 経っているのか、新九郎他の主要人物の年齢は何歳なのか、わかりにくいです。
たとえば、文明9年(1477年)と、背景に細かく載っていれば、とても助かるのですが。安易に比較はできませんが、重野なおきの歴史四コマ漫画では本文中にしっかり年代が説明されていますし、単行本のカバー下の表紙にも年表があって、わかりやすいので、そのような工夫があればなあと、思います。まあ、日本史無知の私は、もっと勉強しなくてはいけないのですが。
しかし、お願いはそのくらいで、巻ごとにおもしろい出来事満載です。
10巻で、結局、伊都と龍王丸暗殺をねらった刺客の正体は不明のままでした。今川新五郎は自分でないと、言い張っていますが、彼の配下の家臣の仕業? すんなりと、平和内に収まりそうにないですね。
新九郎の、男臭い家来達の中で唯一、かわいい雰囲気の山中才四郎が、刺客の矢をまともに受ける場面はショッキングでしたが……やれ、一安心!
かわいいといえば、将軍の義尚もそうで、懸命に新九郎を自分の近臣になるように計らっているのですが、新九郎は大御所の義政のきげんをそこねて、龍王丸の相続が不利になるのを恐れて、辞退してばかり。落胆する幼い表情が、痛々しいほどに愛らしいです。これは不幸萌え? 不憫萌えというのでしょうか? ごめんなさい! でも、やっぱり、かわいい。
11巻で、つる、まさかの再登場。そして、弟でなく、息子の千々代丸に那須家を継いでほしいとの希望を明かすのは、ひとえに、わが子かわいさゆえに。龍王丸のため、実家の伊勢家を頼り、寄進を要求してきた雑掌を一蹴する伊都と、オーバーラップします。これぞ、女というか、母の戦いなのでしょう。一見、物静かで平和なだけに、新九郎は彼女らの強さに驚き入ってしまうのも、納得できます。
それから、あらすじでは省略しましたが、幕府奉公衆の小笠原政清の娘、ぬいが不思議と目立っております。甘党の食いしん坊で、年齢相応? に愛らしい少女で、市で父とはぐれていたのを、新九郎に助けてもらったのですが、今後、何かの縁ができるのでしょうか。怜悧なつるとは正反対の、大らかで無邪気な少女ですけど。
12巻では、これまた、あらすじで省略しましたが、新九郎は仏像作りをしたり、連歌師の宗長から一休宗純の話を聞いて大徳寺に通ったりと、仏門に近づきつつあります。家の借金や家督争い、領地経営に疲れたゆえなのか、単に気分をリフレッシュさせたいからなのか、それとも両方なのでしょうか。
元の聡明丸こと、細川政元の変貌、いや、美貌ぶりにも驚かされました。乳幼児期より、並外れていい顔立ちをしていましたから、美少年にはなるだろうと、多くの方が予想されていたと思います。私もそうでした。興味をお持ちの方は、購入して見てください。
不自然ではない、悠然とした細川家当主ですが、誘拐事件の際、目の前で残虐な殺傷が行なわれていたというのに、平然としているのには、参りました。末恐ろしい人物です。きっと、新九郎は彼と関わるほどに、ひどい目にあわされそうな気がします。逃げなさいよ!
そういうわけで、満足のいく内容でした。次も購入したいと思います。お勧めですよ。それでは。
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