『背徳のボルジア家 上・下』(マーカス・ヴァン・ヘラー 村杜伸/訳 富士見ロマン文庫)の感想
富士見ロマン文庫のNo.117、118『背徳のボルジア家 上・下』(マーカス・ヴァン・ヘラー 村杜伸/訳)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
今回は、官能歴史小説です。しかも、私の大好きなルネサンス時代ですから、読んでいて楽しく、ワクワクしました。
あらすじは、チェーザレ、ルクレツィアの兄弟と、その父親であるロドリーゴ枢機卿(後の教皇アレッサンドロ六世)の愛欲図と、彼らのボルジア家の盛衰をからめた物語です。ボルジア家の三人については、皆、あまりに悪名高いので、私が説明するまでもないでしょう。
とにかく、表向きは、よく知られている歴史のとおりに展開していきますが、その裏では、チェーザレとルクレツィアの間では兄妹姦が、さらにはロドリーゴとルクレツィアもまた、相姦関係にあって、彼らの敵とも……という、凄絶な色情絵図が描かれています。
まず、私的にいただけない点を挙げますと、最初の方で、ロドリーゴはルクレツィアを、「チビッコ娼婦」と、心の中で呼んでおり、さらに、説明文では、彼女の尻を「ヒップ」と、表現しています。歴史物において、それらは、ないでしょう。大いに萎えました。
もう一つ、枢機卿を、「すうきけい」と、ルビがふってあるのですが、間違ってはいないのですけれども、「すうききょう」の方が、すんなり読めと思うのですけどね。
それから(今回はいただけない点が多いな、と自主ツッコミ)、上巻冒頭からしばらく、ルクレツィアとチェーザレが、下着姿から全裸になって遊ぶ様子を、物陰からロドリーゴが興奮しながら見つめている、という強烈な場面が続いたせいか、それ以降のストーリーが、物語が終盤に近づくにつれて、テンションが徐々に下がっているように感じられてなりませぬ。後半の、窮地におちいったチェーザレを救うため、ルクレツィアが政敵の教皇ジュリオ二世に肌を許すなど、刺激的な場面のはずなのにね。
上巻はルクレツィア、下巻はチェーザレがメインのように思われます。エロ好きな方は上巻が、権謀術数といった歴史の裏側に興味を持つ方は、下巻がお好みかと思います。
歴史物・時代物を描くのは、予備知識がないと、なかなか難しいのですけれども、どんなふうに官能表現や場面を含ませていくべきか、私は結構参考になりました。インモラルな性愛描写が苦手でなければ、お勧めいたします。それでは。
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