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2023年3月に作成された記事

2023年3月25日 (土)

『白い獣』(セバスチャン・グレイ 野間幽明/訳 富士見ロマン文庫 No.46)の感想

『白い獣』(セバスチャン・グレイ 野間幽明/訳 富士見ロマン文庫 No.46)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 今回は、今までに読んだ富士見ロマン文庫の中でも、暗さ、救いのなさという意味で一番かと思います。物語のバックグラウンドは、第二次世界大戦末期のナチス。主人公は、ユダヤ人でなく、アメリカ人のスティーブで、彼の元ナチス高官に対する復讐物語なのです。
 簡単に、あらすじを紹介いたしましょう。
 シェリア・ハリスと、激しい情交にふける仲になりましたが、実はスティーブの目的は、彼女の上司、ボルトナー博士から元ナチスの情報を得るためでした。スティーブは一見、誠実で真面目な若者に見せかけていましたが、かなりの年配で、復讐のためならば手段を選ばぬ性格だったのです。
 スティーブのターゲットの一人、「オットーの豚野郎」は、無垢だった娘のエバを汚した挙句、斬殺しました。最後の相手は、ナチス女性高官のゲルダ・ブロイニング。
(以下、回想の文書に入ります)
 ナチス崩壊前、スティーブはイギリス人、ロシア人といった同年輩の少年少女とともに、拘束されてしまいます。それは連合国側の人質というよりも、おぞましくも凄惨なセックス実験と、ゲルダ、オットーらの性欲と嗜虐欲を満たすためでした。
 少年少女達は、近親相姦を強いられ、セックス依存症になり、互いに疑心暗鬼におちいるという、地獄絵図が始まります。そのような中、スティーブは懸命に平静さを保っていたのですが、メアリ・アンズリーと両想いになります。メアリは、ナチスに奪われるくらいなら、先にスティーブに純潔をささげたいと申し出、二人は熱く抱き合うのですが、目的を達する前に見つかって、引き離されてしまいます。
 乱射事件が起き、スティーブはただ一人、奇跡のように生き残りますが、メアリは手ひどい暴行を受けて惨殺されました。彼女の無念を晴らすべく、スティーブは復讐を決意したわけです。
 シェリアの情報により、ゲルダはアルゼンチンに潜伏しているとわかって、二人は向かいます。徐々に、スティーブはシェリアに自分の内面を打ち明けるようになるのですが、ゲルダに逆襲され、捕らえられた時、シェリアは何とゲルダ側にいました! シェリアはスティーブに利用されていたのではなく、ゲルダの忠実なスパイだったのです! スティーブの復讐の行方は……。

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2023年3月18日 (土)

『モーテル殺人事件』(J.J.サヴェージ 石田善彦/訳 富士見ロマン文庫)の感想

『モーテル殺人事件』(J.J.サヴェージ 石田善彦/訳 富士見ロマン文庫・No.21)の感想の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 こちらは、推理成分入りの官能小説です。ただし、殺人事件ですから、エロならぬエグい描写は多いですし、きれいに締めくくられていますが、気分の悪い、いや、何だかモヤモヤする場面もあります。
 簡単に、あらすじをご紹介しましょう。
 主人公は、私立探偵バート・レヴィン。バートは美女スー・ミッチェルによって、ロサンゼルスから、カリフォルニアの町はずれのモーテルに呼び出されます。
 スーの依頼は、彼女が前市長のグレン・ポラードの引越しパーティに招待されるよう、準備してほしいというものでした。当然、バートは当惑しますが、彼女の色仕掛けプラスアルファによって、承知させられてしまいます。彼はどうにか、ポラードからの招待を成功させ、モーテルでスーに報告するはずでしたが、彼女はベッド上で、血まみれになって死んでいました。
 同時期、ボギーとチャーリーは脱獄し、ポラードの屋敷に隠されているという大金を見つけ出そうと、たくらみます。まんまと潜入には成功しましたのですが、二人は家政婦ローズの無残な死体を発見し、逃げ出します。チャーリーは発作的に、飛び降りてしまいました。
 ボギーは逮捕され、殺人の容疑がかけられます。恋人のキャシーは、彼の無実を信じて、結婚の決意を固めました。
 バートに容疑はかかりませんでしたが、この謎過ぎる事件に納得できず、ボギーの無罪を証明しようとします。
 まず、スーが殺されたモーテルは、同性愛者のミディが経営し、愛人の既婚女性、マーサとも、ひそかに情交を楽しむという、奇妙なものでした。
 経緯を聞いたポラードは、ボギーの弁護士になろうと名乗り出、バートを応援します。
 さらに、バートは刑務所の医師ヒルダ・トロスに、ボギーと、すーの秘密を知らされます。
 新聞記者メイ・ダルツェルに取材されて、事件の全貌と謎を語りますが、彼女は別の顔も持っていました。
 いよいよ、ボギーは犯人でないと、確信を深めるバートでしたが、この謎多き事件の裁判が始まってしまいます。犯人は一体誰なのか。
 
 

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2023年3月12日 (日)

『マタ・ハリの日記』(マーク・アレクサンダー編/秦新二 訳・富士見ロマン文庫)の感想

『マタ・ハリの日記』(マーク・アレクサンダー編/秦新二 訳・富士見ロマン文庫 No.16)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 マタ・ハリは実在した、大物の女性スパイですが、その日記というわけです。果たして、これは官能小説か、ノンフィクションではないかと、ツッコミを入れたくなりますね。
 ところが、序文のマーク・アレクサンダー自身が、ネタばらしをしてくださっており、開いた口がふさがりませぬ。
 これはマタ・ハリによる、日記という形の小説なのか、それとも、ただの妄想の書き流しなのでしょうか。
 どちらにせよ、私が今までに読んだ富士見ロマン文庫作品の中で、もっともおもしろくて魅力的な作品です。
 その理由は、エロのてんこ盛りであること、次に、マタ・ハリの栄光から無残な転落までのジェットコースター人生、彼女と様々な男性達との会話が当意即妙で、おかしささえも感じること、最後にここまで多くの魅力を持ちながら、雑然としておらず、一気に読ませてしまうパワーと展開があることです。

 あらすじとしては、マタ・ハリの経歴やその生涯については、非常に有名なので、省略いたします。日記の表現によりますと、マタ・ハリはインドで踊りを学びましたが、寮の同室者の少女、ラナ・プラから性愛の手ほどきを受けます。他にも、アンツェ、バービーといった少女達の行為も垣間見て、マタ・ハリは大いに影響を受け、自慰をしていたところを叔父に見つかり、いわゆる、いたずらをされてしまいます。修道院でもまた、彼女はヘンリーテ、マリアといった学友と、性愛の知識と実践を行なっていったのでした。
 ところが、結婚した夫のマクレオドは、非情な暴君で、マタ・ハリをはなはだしく消耗させます。加えて、浪費家の夫は大金を得るために、マタ・ハリに売春のようなことを強要するのでした。けれども、資産家のピーターは初めて彼女を大切にし、二人は互いに恋慕の情を抱きます(このあたりは、もっともロマンチックです)。残念ながら、間もなくして、マタ・ハリは彼の最期の報告を知らされるのでした。 

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2023年3月 5日 (日)

『どれが恋かがわからない』1巻(奥たまむし・カドカワ)の感想

 コミック『どれが恋かがわからない』1巻(奥たまむし・カドカワ)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 帯カバーに、「ハイスピード百合コメディ!/恋の過剰摂取(オーバードーズ)」と、書かれているとおりの内容です。
 だから、性行為こそありませんが、同性愛は苦手! という方にはお勧めできません。
 が、おもしろければ百合でもオーケーな方には、楽しんでいただけるかと思います。
 主人公は、大学に入学したばかりの空池メイ。彼女は高校卒業時に同級生相手に失恋してしまったので、「ぜったい彼女をつくる!」という熱意を持ってきました。
 まず、この冒頭からして、私は新鮮でしたね。
 従来の百合ヒロインなら、「恋した相手が、仲良しの娘。どうしよう?」と悩んだり、「こんなの、ダメ!」と、迷ったりして、ストーリーが進まないことがあるのですが、メイは実にわかりやすいです。
 しかし、友達づくりも出遅れたメイですが、五人もの! 美少女と美女と出会って、恋をする羽目になり、「どれが恋かがわからない」状態になってしまうのです。
 あらすじというか、五人の彼女候補を登場順に紹介いたしましょう。

1)白沢リリ
 新入生オリエンテーションか、初講義? 時に、メイの隣りの席にやって来た同級生。五人の中で一番巨乳で、新人アイドルながら、シャイな性格。メイの手や頬の感触が好き。

2)百目鬼マリア
 五人の中で最年長の美人で、しかも著作がベストセラーという心理学科教授。メイの反応から、テレパス顔負けに、心の内や秘密を読みまくり、メイがうろたえるのをおもしろがっている。メイがリリ、港、カオルと好き合っていることも察知している、唯一の人。

3)湊(ミナト。姓か名前か不明)
 芸術学部三年で、演劇部所属。カフェテリアのバーテンのようなボーイッシュなスタイルで、メイと初めて会った。実はおたくっぽい声フェチで、メイの声に惹かれている。

4)味間カリン
 湊と同じ三年で演劇部。料理が得意で、男うけしそうな、かわいい外見の割に、大胆なキス魔。メイとのキスを気に入っている。

5)国政カオル
 メイの寮の同室先輩。柔軟剤の香りも苦手な、嗅覚過敏。好き嫌いが激しく、言動もきついが、国際貢献をするのが夢で、正義感は強い。メイの肌のにおいを好きになり、抱きまくらとして、過剰スキンシップを繰り返す。


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