『モーテル殺人事件』(J.J.サヴェージ 石田善彦/訳 富士見ロマン文庫)の感想
『モーテル殺人事件』(J.J.サヴェージ 石田善彦/訳 富士見ロマン文庫・No.21)の感想の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
こちらは、推理成分入りの官能小説です。ただし、殺人事件ですから、エロならぬエグい描写は多いですし、きれいに締めくくられていますが、気分の悪い、いや、何だかモヤモヤする場面もあります。
簡単に、あらすじをご紹介しましょう。
主人公は、私立探偵バート・レヴィン。バートは美女スー・ミッチェルによって、ロサンゼルスから、カリフォルニアの町はずれのモーテルに呼び出されます。
スーの依頼は、彼女が前市長のグレン・ポラードの引越しパーティに招待されるよう、準備してほしいというものでした。当然、バートは当惑しますが、彼女の色仕掛けプラスアルファによって、承知させられてしまいます。彼はどうにか、ポラードからの招待を成功させ、モーテルでスーに報告するはずでしたが、彼女はベッド上で、血まみれになって死んでいました。
同時期、ボギーとチャーリーは脱獄し、ポラードの屋敷に隠されているという大金を見つけ出そうと、たくらみます。まんまと潜入には成功しましたのですが、二人は家政婦ローズの無残な死体を発見し、逃げ出します。チャーリーは発作的に、飛び降りてしまいました。
ボギーは逮捕され、殺人の容疑がかけられます。恋人のキャシーは、彼の無実を信じて、結婚の決意を固めました。
バートに容疑はかかりませんでしたが、この謎過ぎる事件に納得できず、ボギーの無罪を証明しようとします。
まず、スーが殺されたモーテルは、同性愛者のミディが経営し、愛人の既婚女性、マーサとも、ひそかに情交を楽しむという、奇妙なものでした。
経緯を聞いたポラードは、ボギーの弁護士になろうと名乗り出、バートを応援します。
さらに、バートは刑務所の医師ヒルダ・トロスに、ボギーと、すーの秘密を知らされます。
新聞記者メイ・ダルツェルに取材されて、事件の全貌と謎を語りますが、彼女は別の顔も持っていました。
いよいよ、ボギーは犯人でないと、確信を深めるバートでしたが、この謎多き事件の裁判が始まってしまいます。犯人は一体誰なのか。
いただけない点としては、まあ、定番と言えましょうか、ご都合主義なのでしょうか。これほどタイプの異なる美女が次から次へと現われ、主人公とセックスできるわけがありませんね。女性視点で見ると、男性メインのドリーム小説だなと、感じさせられてしまいます。
しかしながら、謎解きのメインストーリーからは脱線せずに、多くのエッチな場面を、不自然にならずにつないでいくのは、さすが! プロの力量と、思いましたね。
それから、お話の全貌としては、別々の事件が交差し合って、複雑怪奇なニュアンスを帯びているという意味では、京極夏彦の『魍魎の匣』が連想されました。もちろん、こちらの方が、シンプルではありますが。
そういうわけで、すべての方にはお勧めできませんが、ストーリー構成、エロの表現においては、かなり勉強になると、私は思います。ご興味がおありの方は、ぜひどうぞ。それでは。
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