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2023年4月に作成された記事

2023年4月30日 (日)

『絢爛たるグランドセーヌ』15巻(Curvie・秋田書店)の感想

 コミック『絢爛たるグランドセーヌ』15巻(Curvie・秋田書店)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 前半は、奏が暁人と、パリの炎をパ・ドゥ・ドゥで踊る公演。後半は(こちらがメイン)、奏が目標だった、イギリスのロイヤル・バレエ・スクールに留学するお話で、順調にはいかないだろうと予想していたのですが、まさか、そのようなことが起きようとは! 実は、前半後半とも、驚かされました。
 あらすじをご紹介しましょう。
 奏は久しぶりに、さくらやプロの練習を見、そのレベルの違いにショックを受けます。パリの炎が、フランス革命の物語で、ヒロインのジャンヌになりきろうと、奏は懸命に練習を重ね、本番では暁人とともに、火花の散るような高難度のパの応酬を行ないます。失敗はなく、観客からの温かい拍手も受けましたが、奏は、「どかーんって 盛り上げられなかった」と、不満。
 そして、友人や家族の優しい励ましを受けた後、奏はイギリスへと旅立ちました。早速、ニコルズ先生の出迎えを受け、寮の四人部屋に入ります。
 最初に出会ったのは、YAGPでかなり辛辣だった、エヴリン・フォックス。次に、閉鎖的で目を合わせようとしないキーラ。最後に、シンガポール国籍のレベッカ。エヴリンと奏は留学で、キーラとレベッカは進級組。そのエヴリンの大切なポスターを、レベッカがあやまって破ってしまったことで、エヴリンは激怒し、二人は対立関係に。
 一方、エヴリンと奏に、ロイヤル・スタイルのレッスンによる洗礼を受けます。基礎の基礎たる動きから、ヴァシリーサ・トルスタヤ先生の注意を受け、今までのやり方が通用しないことを痛感させられます。焦ったような真剣な表情になるエヴリンと対照的に、奏は「大変だぞ」と、ワクワク感がおさえられないのでした。

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2023年4月22日 (土)

『トルー・ラブ』(ジョン・スミス 羽林泰/訳 富士見ロマン文庫)の感想

『トルー・ラブ』(ジョン・スミス 羽林泰/訳 富士見ロマン文庫 No.78)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 手持ちの富士見ロマン文庫も、こちらでラスト一冊になってしまいました。意外と早いものです。
 ハズレが続いていましたが、今回は大当たりでした!
 まず、英語の教科書に登場する人物みたいな作家様ですが、翻訳者様のあとがきによれば匿名で、謎の方だそうです。
 けれども、石川啄木や北原白秋のような文豪が回し読みをされていたという、古き良き時代の、名作ポルノ小説だとか。
 内容とあらすじを説明いたしましょう。
 スミス大学の卒業式前、秘密社交クラブで送別夕食会が開かれていましたが、フランク・イートンが、会員の中で唯一童貞であることが彼らの話題となります。彼の性を卒業させるべく、娼婦のアイダとビックが呼ばれますが、成果は五分五分といったところ。
 イートンを本気にさせようと、会員は、卑猥な言葉を使わないようにするという条件で、彼らそれぞれの性の初体験談を語る、というものです。
 この序章っぽい部分から始まって、次のようなお話が続いていきます。

 第一章 ブラウンの物語「ゴム製品」
 第二章 ネッド・スタンレーの物語「内気な少年」
 第三章 バートンの物語「仮装舞踏会」
 第四章 イートンの物語「短く甘く」
 第五章 幕合い劇-シャンペンとキス
 第六章 リバーズの物語「夜の姫君」
 第七章 スタイブサントの物語「干草小屋の中で」
 第八章 リチャードの物語「解剖学の公開実験」
 第九章 ランキンの物語「寝台車の妖精」
 第十章 バークレーの物語「船上の恋」
 第十一章 幕合い劇「背面攻撃」
 第十二章 ウィズロウの物語「謎の訪問者」
 第十三章 アイダの物語「女の場合」
 第十四章 ビックの物語「あれの楽しさ」
 第十五章 会長の物語「泥酔者」

 第五章と第十一章の幕合い劇は、番外編っぽい、アイダとイートンのエロチックな触れ合いのエピソードです。短い割に、濃厚にいやらしいですね。
 そして、第十三章、第十四章は女性側の体験談。
 それらを除けば、個性もシチュエーションも異なる、男性側からのお話というわけで、短編ポルノが15あるという感じですね。
 最後は、「おわりに」で、ジョン・スミスがこのお話を書いた理由を述べています。
「つまり、女性というものは、女性に誘惑された体験を持つ男性か、さもなければ(自主規制)」という命題に、私は反発を感じるような、同感するような、もやもやしたものが残りますが。

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2023年4月15日 (土)

『トップモデル』(作者不詳 小沢瑞穂/訳 富士見ロマン文庫)の感想

『トップモデル』(作者不詳 小沢瑞穂/訳 富士見ロマン文庫No.75)の感想を申します。ネタバレが含まれていますが、大したことではないかと思います。
 その理由は、この小説がつまらないからです。

 あらすじを説明いたしますと、大富豪スタヴロス・ステファノスの愛人として有名な、元トップモデルのアリス(彼女が作中ヒロイン)が、「私」として、一人称で語るスタイルです。スタヴロスの急死にともない、アリスはアメリカに帰国してきました。大勢のマスコミによって追いかけられる中、プリンス・アルバートとマーク・ジャドスンの二人が彼女の世話役になります。
 15年もギリシャの小島に住んでいて、アメリカの日常生活にすっかりうとくなってしまったアリスは、化粧で変装し、あちこちへ出かけては、行きずりの男達と話をしたり、恐れもせずに体の関係になったりするのでした。
 そうやってすごす反面、アリスは自分の過去を想起します。異常な偏愛ぶりを示した父と、酒びたりの母という一家からの脱出、モデルとしての名声を勝ち取っていったこと、何人もの男達との出会いと恋、挫折、別れ等々。

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2023年4月 9日 (日)

『アダムとイヴ』(マーカス・ヴァン・ヘラー 水沢夏樹/訳 富士見ロマン文庫)の感想

『アダムとイヴ』(マーカス・ヴァン・ヘラー 水沢夏樹/訳 富士見ロマン文庫 No.24)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 作者様、翻訳者様には、申しわけありませんけれども。
 今回の『アダムとイヴ』、それから次回にアップする予定の作品は、今まで読んだ富士見ロマン文庫シリーズの中で、もっともおもしろくありませんでした。
 簡単に、あらすじをご紹介しましょう。
 イギリスの片田舎の美男美女カップル、アダムは画家に、イヴは女優になることを熱望していました。アダムはイヴに、積極的に性のアプローチをするのですが、イヴは拒否して逃れます。思案した挙句、イヴは貪婪に夢をかなえるため、舞台監督などの実力者に、いわゆる枕営業を行なうことを決心します。最初、うまくいかなかったのですが、徐々に巧みに自分を売りこむようになり……。
 一方、アダムも自分の体で、批評家や金持ちのパトロンを味方にすることを学びます。
 アダムとイヴ、二人は同じように成功への道を上り詰め、周囲には初対面のようなふりをしながら、海中で念願の合体をしたのですが、もはや以前の恋人同士にはなれませんでした。

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2023年4月 1日 (土)

カラーブックス252『名作の旅5 堀辰雄』(中村真一郎・小久保実 共著 保育社)の感想

 カラーブックス252『名作の旅5 堀辰雄』(中村真一郎・小久保実 共著 保育社)の感想を申します。堀辰雄の小説の解説本ですので、ネタバレまみれですから、苦手な方はご注意ください。

 リサイクル本屋様で時々見かける、今は無き、保育社のカラーブックスシリーズです。手のひらサイズ、二段組とはいえ200ページに満たない厚みでありながら、堀辰雄の作品とそのバックグラウンドたる軽井沢や大和路などの情景を、多くのカラーもしくは白黒写真を掲載して、イメージたっぷりに解説している内容です。
 掲載作品は、『美しい村』『風立ちぬ』『木の十字架』『菜穂子』『大和路』など、主要作品すべてといっていいでしょう。
 ただ、昭和47年8月1日発行ですので、情報の古さは否定できませぬ。
 作者様は終始、わかりやすく、真面目に述べておられますが、もしかして、後年、異なる定説や事実が発見されたかもしれないでしょう。
 巻末には何と、作者様の住所が載せられていて、昭和の時代は個人情報保護の気持ちがなかったのだなあと、戸惑わされました。

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