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2023年4月15日 (土)

『トップモデル』(作者不詳 小沢瑞穂/訳 富士見ロマン文庫)の感想

『トップモデル』(作者不詳 小沢瑞穂/訳 富士見ロマン文庫No.75)の感想を申します。ネタバレが含まれていますが、大したことではないかと思います。
 その理由は、この小説がつまらないからです。

 あらすじを説明いたしますと、大富豪スタヴロス・ステファノスの愛人として有名な、元トップモデルのアリス(彼女が作中ヒロイン)が、「私」として、一人称で語るスタイルです。スタヴロスの急死にともない、アリスはアメリカに帰国してきました。大勢のマスコミによって追いかけられる中、プリンス・アルバートとマーク・ジャドスンの二人が彼女の世話役になります。
 15年もギリシャの小島に住んでいて、アメリカの日常生活にすっかりうとくなってしまったアリスは、化粧で変装し、あちこちへ出かけては、行きずりの男達と話をしたり、恐れもせずに体の関係になったりするのでした。
 そうやってすごす反面、アリスは自分の過去を想起します。異常な偏愛ぶりを示した父と、酒びたりの母という一家からの脱出、モデルとしての名声を勝ち取っていったこと、何人もの男達との出会いと恋、挫折、別れ等々。

 前回の『アダムとイヴ』と共通する不満なのですが、「いくら美女であっても、トップモデルになど簡単になれるものではない」と、私は思えてならないのです。いや、アリスなら簡単になれた、というのなら、彼女にしかない美の特質を、納得いくように描いてほしかったです。
 加えて、翻訳者様はなぜか、「穏やかに」という形容動詞を多用しすぎます。原文で同じ言葉が使われていたとしても、例えば、「ゆったりと」「優しく」などとして、変化をつけるべきではないでしょうか。手抜きっぽく思えてなりませぬ。
 いいところは、これまた、『アダムとイヴ』にかぶるのですけれども、アメリカで流行していたウーマンリブ運動、シングルズ・バー(日本で言うところの出会い系バー)のやり取りが、生々しくておもしろいです。
 しかし、私は、1970年代頃のアメリカ社会を、ぜひとも知りたいと願ったわけではないので、やっぱり、不満でしたね。
 そのようなわけで、エロチックな場面も描かれていて退屈ではありませんが、メインストーリーが疑問だらけで、小説としては残念な感じでした。たまに、富士見ロマン文庫でも、はずれがあるのですね。
 そうしたら、次の作品は、エキサイティングにエロくて楽しかったから、何だか運命の転変みたいです。読む方を選びますが、興味がおありの方は、どうぞ。それでは。

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