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2023年5月に作成された記事

2023年5月27日 (土)

『ぼくのヴィヴィエ夫人』(ユーゴ・ソレンツア 村野圭介/訳 富士見ロマン文庫 No.2)の感想

『ぼくのヴィヴィエ夫人』(ユーゴ・ソレンツア 村野圭介/訳 富士見ロマン文庫No.2)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 実は、こちらの本は、私がもっとも興味を引かれて読みたかった、富士見ロマン文庫のものです。理由は、タイトルがエロい、しかも、明らかに日本の官能小説ではないと思うからです。
 ほら、仮に、「ぼくの緑川夫人」「ぼくのお隣の緑川のおばさん」って……。夫人とは、めったに使わないし、後者だと、児童文学みたい。
 だから、少し期待していたのですが、読了してみると。
 何だか、1950~70年代くらいの、恋愛小説、もしくは、恋愛映画のノベライズみたい、でした。

 登場人物は、主人公は17歳の男子高校生、ダニエル・メルシェ。40歳頃ながら、30代にしか見えない、若々しくも豊満な肉体の持ち主、ヴィヴィエ夫人、またはジョゼットは近所の住む未亡人。彼女のまわりには、同年代の恋人、モーリス・タラベルと、娘のドミニック、35歳の独身の友人マリスがいます。
 簡単にあらすじを記しますと、ダニエルはある日、ヴィヴィエ夫人がモーリスと濃厚に愛の営みを行なっているのを、かいま見てしまい、大いにショックを受けます。知ってか知らずか、彼女は大雨でびしょ濡れになったダニエルの世話をし、会話をするうちに、二人の間に好意が生まれます。再び会った時、ダニエルは好奇心から、ヴィヴィエ夫人は恋人への不満と、少年のみずみずしさに心惹かれてしまい、肉体関係を持ってしまいます。ダニエルは有頂天になり、いささか傲慢な暴君へと変貌していきますが、ヴィヴィエ夫人はくやしいような、それが愛しいような、複雑な気分に。
 まもなくして、ダニエルは娘のドミニックとも知り合い、親しくなります。大胆な愛撫を行なうも、ダニエルは一線を越えられず、ドミニックは悲しみます。ダニエルの心変わりと、大事な一人娘のドミニックを奪われる恐怖から、ヴィヴィエ夫人は、友人のマリスに頼んで、彼を誘惑してもらいます。すんなりと、マリスとも交わってしまったダニエルですが、そのことに後ろめたさはなく、自分が本当にドミニックが好きなことを思い知るのでした。
 ダニエルと会えなかったドミニックは、悩んだ末に、母のヴィヴィエ夫人にすべてを打ち明けます。ヴィヴィエ夫人はダニエルをわが家に招待するように言って、昔の恋人であるモーリスに連絡をし、そのプロポーズを受け入れます。その頃、ダニエルとドミニックは、楽しく海辺ですごしていたのでした。

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2023年5月21日 (日)

『鴻池剛と猫のぽんた ニャアアアン!』(鴻池剛・カドカワ)の感想

 コミック『鴻池剛と猫のぽんた ニャアアアン!』(鴻池剛・カドカワ)の感想を申します。ネタバレが含まれていることに加え、今回はいわゆる汚物系のお話もありますので、(実は、私もよくやるのですが)お茶やお菓子などを食べながら、お読みにならないよう、ご注意ください。
 一言で申し上げますと、このマンガは、「笑った」とか「癒される」ものではないように思います。要するに、自分という人間以外の生き物と一緒に暮らすのは大変なんだなと、痛感させられます。タイトルのとおり、作者様が相手にしてやっているのは猫ですけれども、小さな猫一匹でもこんなに苦労するのですから、彼氏彼女、配偶者、子供ならば、苦労と苦悩、無限大、でしょうか。
 あらすじとしては、タイトルのままですね。後半に、子猫だったぽんたが友人を通じてやって来たことが、50ページの描き下ろしで描かれています。1巻の表記はありませんが、2、3巻が刊行されていますから、事実上1巻目です。
 私も、猫マンガは、じっくりにせよ、チラにせよ、何度も読んできましたが、描かれている猫(恐らくミックス)のぽんたは、元気といえば聞こえはいいのですが、活動的すぎ! 飼い主である作者様の都合など、ほぼ考えず、吐く、排泄する、汚す、破壊すると、天使よりも悪魔に近い生き物なのではないかと思われてなりませぬ。
 だから、猫が生理的に駄目という方には、避けられた方がいいかもしれません、けれども。
 そのかわいげのなさが、不思議とかわいいのです。

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2023年5月13日 (土)

『砂をつかんで立ち上がれ』(中島らも・集英社文庫)の感想

『砂をつかんで立ち上がれ』(中島らも・集英社文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 やはり、この作者様の作品は、おもしろいなあと、思いました。
 内容は、読書感想と、本(小説、マンガ全般)の解説メインに、エッセイを加えたものです。
 4つに分かれていますが、それぞれの章タイトルは、作中タイトルのもの。
『砂をつかんで立ち上がれ』も、4つめの章(?)でビートたけしの『顔面麻痺』の文庫解説のタイトルが元になっています。

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2023年5月 7日 (日)

『図録 性の日本史【第三版】』(笹間良彦・雄山閣)の感想

 書籍『図録 性の日本史【第三版】』(笹間良彦・雄山閣)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 内容はタイトルのとおり、日本の古代から現代まで、性に関する事柄を、くわしい資料と、作者様による詳細なイラストで描いて説明されたものです。
 なので、エロいっちゃエロいのですが、性器のお話はほとんどなくて、男女メインの性行為が描かれています。
 ただし、古代は神々、神と人のエピソードがありましたし、獣姦、性風俗産業などにも言及されており、どこから読んでも、「へえ、なるほど」「そういうことがあったのか」と感心され、学術書的な位置づけのはずなのに、わかりやすいイラストとあいまって、色っぽいコラムや記事を読んでいるかのような気分になれます(おいおい←自主ツッコミ)。
 ところで、第三版というのは、6ページの雄山閣編集部の説明によれば、「2002年刊行〈増補版〉を底本とし、できる限り原文を尊重しつつ明らかな誤字や誤記載を正し、より読みやすい書籍となるように再編集いたしました」とのことです。


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