『砂をつかんで立ち上がれ』(中島らも・集英社文庫)の感想
『砂をつかんで立ち上がれ』(中島らも・集英社文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
やはり、この作者様の作品は、おもしろいなあと、思いました。
内容は、読書感想と、本(小説、マンガ全般)の解説メインに、エッセイを加えたものです。
4つに分かれていますが、それぞれの章タイトルは、作中タイトルのもの。
『砂をつかんで立ち上がれ』も、4つめの章(?)でビートたけしの『顔面麻痺』の文庫解説のタイトルが元になっています。
本の解説も悪くはないのですが、私は「全ての聖夜の鐘」「昇る朝日」「天使とエロス」の3つの章が興味深くて、笑いが止まらなかった箇所も、いくつもありましたね。
特に、「全ての聖夜の鐘」の中の「震災の置き土産」で、作者様の蔵書に驚かされました。エンターテイメント系の方だと思っていたのですけれども、本は皆、純文学系ではありませんか。しかも、私の尊敬する翻訳者様によるものではないか、と。
バタイユやアラゴンがいいなと思う私は、我ながら変な趣味と思っていましたが、そうじゃなかったのですね(苦笑)。
(と、考えていたら、巻末で原田宗典様も同じ個所を取り上げていて、これもまた意外に思いました)
加えて、子供の頃の読書の始まりが偉人伝で、やがて、大人向けのエンターテイメント系に変わるあたりも、おお、私と似ていると、うれしくもなりました(おめでたい)。
ただ、私の場合、偉人伝から人体の秘密→図鑑→伝説→童話→戦争体験記と、迷走して今にいたるわけですが。
読書好きとして、東海林さだお、田辺聖子作品のピックアップは、小躍りしたくなるくらい、うれしかったです。
一方、私がまだ読んでいない、作者様の愛読書については、機会を見つけて、必ず読もうと、心に誓いました。
また、自分がアマノジャクだと、書いておられたところがありましたが、私は少し違うなと、思います。
根拠が薄弱で申しわけないのですが、作者様は一般的な評価や(販売のための)宣伝文句を見聞きするよりも、先入観をセーブして自身で考え、アイディアを再構築しているように、私には感じられました。
とにかく、戯曲のシナリオから発しているのか、すらすらした文体のリズム感と、テーマに対する予想外の切り込み、着眼点に、舌を巻いたり、笑ったり。でも、不思議と不快感がないのですよね。
そういう不思議なエッセイを読みたい方、いい本を探しておられる方にお勧めいたします。私はまた、中島らも作品の感想をアップし続けますね。それでは。
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