『図録 性の日本史【第三版】』(笹間良彦・雄山閣)の感想
書籍『図録 性の日本史【第三版】』(笹間良彦・雄山閣)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
内容はタイトルのとおり、日本の古代から現代まで、性に関する事柄を、くわしい資料と、作者様による詳細なイラストで描いて説明されたものです。
なので、エロいっちゃエロいのですが、性器のお話はほとんどなくて、男女メインの性行為が描かれています。
ただし、古代は神々、神と人のエピソードがありましたし、獣姦、性風俗産業などにも言及されており、どこから読んでも、「へえ、なるほど」「そういうことがあったのか」と感心され、学術書的な位置づけのはずなのに、わかりやすいイラストとあいまって、色っぽいコラムや記事を読んでいるかのような気分になれます(おいおい←自主ツッコミ)。
ところで、第三版というのは、6ページの雄山閣編集部の説明によれば、「2002年刊行〈増補版〉を底本とし、できる限り原文を尊重しつつ明らかな誤字や誤記載を正し、より読みやすい書籍となるように再編集いたしました」とのことです。
いただけない点としては、以前も同じ作者様の別の本で申したかもしれませんが、取り上げている資料に、読みづらいほど難解な文章が含まれていることです。特に、第一部 古代編は、日本書紀と古事記の原文のため、冒頭から読めませぬ! もちろん、作者様はすぐに書き下して訳されておられて、無知な私にはありがたいのですけれども。
でも、ストレスを感じるのは、上記のことだけで、第二部 中世編、第三部 近世編、第四部 近代編、第五部 現代編と、総項目120!
さらに、巻末には〈付録〉遊女の値段 隠し売女の異名 春画 色街と売春婦として、〈付一〉~〈付四〉まで収められています。
マニアックなエロ知識(偏狭なエロ雑学に近いかな?)に関して、私は知っている方だと、思っていたのですが、参りました。心から土下座いたします。
性風俗が盛んになる、近世(江戸時代)から現代まで、私は飛び飛びの、半端な情報を覚えているだけでした。
たとえば、江戸時代の吉原にしても、局見世から花魁までの違い、遊女と芸者の違いとその決まり、夜鷹、宿場女郎、宿場や畑で働く女性の淫売行為など、目から鱗が落ちっぱなしでした。
そして、やれて楽しい、もうけて良かったというばかりでなく、詐欺のような風俗遊び(「七六 やれ吹けそれ吹け」「七七 やれ突け それ突け」「百十八 春画とエロ写真売り」など)もあって、よくぞまあ、人は(男女は?)あの欲望を抑えきれず、求め続けたのだなあと、思わされました。
そして、残念ながら、作者様は2005年に逝去されたそうですが、性産業は今も衰えず、今後とも別のものが生まれ、育っていくのでしょうね。
性のパッションがすごいのか、昔から欲望を満たそうとした人々は浅ましくもエネルギッシュなのか。驚きと嫌気が相半ばする、微妙な気持ちになりました。それでも、王道でない日本史(風俗史?)がお好きな方にお勧めいたします。私は結構好きですね。それでは。
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