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2023年6月 4日 (日)

『熾火(おきび) マンディアルグ短編集』(生田耕作/訳 白水社)の感想

 書籍『熾火(おきび) マンディアルグ短編集』(生田耕作/訳 白水社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 また、強烈な小説世界を知ってしまったなあ、というのが正直な感想です。エロ、グロ、リリカルとでも呼びましょうか。
 最初に、いただけない点ですが、ライトノベルに慣れた方には、改行なしで延々と続く、こちらの文体は、戸惑い、あるいは苦痛に思われるかもしれません。似たような文体(あくまで文体。作風ではありませぬ)は、やはり、ドストエフスキーでしょうか。
 私は文章と、それが脳内で創り出すイメージに、波乗りをしているような気分で読了いたしました。いいのか悪いのか、わかりませんけどね。
 あと、作者様のお好みでしょうが、女性がひどい目にあう筋が多いので、強くフェミニズムを追及されている方には不愉快に思われるかも。
 もう一つ、各作品の冒頭で、作品の一部を引用されているのですが、フランス文学にうとい私は、最初の作品「熾火」を除いて、何の小説か評論なのか、さっぱりわかりませんでした。できれば、翻訳者様も、簡単な説明があったらわかりやすかったろうにと、思いました。

 収録作品は、次のとおりです。

 熾火
 ロドギューヌ
 石の女
 曇った鏡
 裸婦と棺桶
 ダイヤモンド
 幼児性

 では、各作品のあらすじと感想を申しましょう。

 

「石の女」、パスカル・ベナンは、真っ二つに割れた石の中から出現した、小さな二人の裸の女を発見します。私なら腰を抜かすであろうに、理解不可能な状況と運命まで、主人公が受け入れてしまいます。案外、腹の据わった人は、そういうものなのでしょうか。
「ロドギューヌ」、今はさびれた、製塩所の昔話。ロドギューヌ嬢は、牡羊と恋人同士であるかのように仲がよかった。そのために、男達に注目され、牡羊が殺されてしまいます。ロドギューヌの無言の抗議? 攻撃? が怖いです。
「曇った鏡」、すさまじい形相の男の一人語りです。悪夢のようなイメージの連続が、怖くなってしまいました。
「裸婦と棺桶」、ダニエル・プワンの見た、リアルで不可解な夢想。一糸まとわぬ女は、マリアナ・グアヒアコと名乗り、その奇妙な生い立ちと経緯を語ります。泥臭さと、ガラスのような繊細さがせめぎ合っているみたいでした。
「ダイアモンド」、巻末のあとがきによれば、「幼児性」同様、作者様のお気に入り作品だそうです。宝石鑑定の才があるサラは、あるダイヤモンドを手に取っているうちに、その内部に引きこまれ、ライオンのような男に襲われます。唐突に、元の世界へ帰れましたが、ダイヤモンドに赤い傷を見つけるのでした。サラは父に返品しないように言い、指輪に仕立ててもらうのでした。全裸の場面、多いですね(苦笑)。とてつもなく奇異な体験をすれば、その後の運命も受け入れられるものでしょうか。サラは明らかに……なのに、ライオンの男との行為がよかったのでしょうか。
「幼児性」、娼婦との行為の真っ最中、ジャン・ド・ジュニは、幼児期の記憶を思い出します。カメ、豚と続いて、家庭教師のニーナを思い浮かべるのでした。しかし、本当に印象に残ったのは、馬車のむごい事故でした。それを再認識したジャンは……。運命のむごたらしさ、人間の醜くも美しい部分を、私は感じました。これは結構、好きな作品です。
「熾火」、美しいけれども、見栄っ張りらしい女性、フロリーヌは、南米人の舞踏会に出かけて、悲惨な目に合います。ポーリーヌ・レアージュと聞けば、あの作品以外にないでしょう。そのせいか、私はこのお話が一番好きです。不気味な描写と、おかしな掛け声は、非日常とアンハッピーエンドを連想させずにはいられませぬ。

 ともあれ、作者様はエロ好きなのが、よくわかります。不可解なシーンと、緻密なストーリーの中で楽しんでみたい方にお勧めいたします。それでは。

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