『ダミー・ワイフ』(ロバート・シェルドン 江藤潔/訳 富士見ロマン文庫 No.10)の感想
書籍『ダミー・ワイフ』(ロバート・シェルドン 江藤潔/訳 富士見ロマン文庫 No.10)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
エッチ場面と描写が大好きな私ですが、残念ながら、この本は富士見ロマン文庫の中で今一歩でした。
理由の一番が、読みにくいという点にありましたけれども、他にもいくつか。後で、まとめて記します。
あらすじとしては、主人公は元上流階級出身の女性ジョジョで、家出をして、フリーセックスを楽しむ奔放な生活を送っていますが、突然、一卵性双子の妹、モイラから、自分の身代わりになってくれと頼まれ、しぶしぶながら承知します。
ジョジョはモイラとして、夫のブラッド、娘のシャロンと生活しますが、二人の、表向きは上品で豪奢な暮らしをしながら、その放縦ぶりに驚かされます。特に、シャロンは近所の年配者、クロスウエイと、友人まで巻きこんで、淫らなふるまいをしていることに注目します。
そこで、ジョジョは乱交パーティーを開いて(!)、その折にクロスウエイを脅迫して、シャロンとの関係を解消させます。さらに、クロスウエイからブラッドの会社の援助も取りつけます。こうして、一連の問題を解決したジョジョは、モイラと再会した時、身代わり代として、思いがけないものを要求するのでした。
こうやって書くと、おもしろそうだし、あらすじでは省略しましたが、冒頭のジョジョの、やりたい放題描写、シャロンとクロスウエイの、少女と老人の危ない場面、モイラと父親の禁断関係など、よくまあ、次から次へと、性交場面が続くものだと、感心しました、が。
いただけない点の一つが、ライトノベル風の、口語体表現が多い文章なのに、改行があまりされていないせいか、文章のリズムの工夫がされていないのか、とにかく読みにくいのです。刺激的な場面の連続に、生唾ゴックン、どころか、「はいはい、わかりました」と、心の中で何度言ったことか。
さらに、もう一度、読み返し、あらすじを書いて思ったのですが、肝心な性交場面が薄味に感じられてなりませぬ。本当に、官能小説? エロ小説とは、全裸になって、性器をさらけ出して、愛撫して(自主省略)だけでは、ワクワクも、背徳感も感じられないことが、悪い意味で、よく理解できました。
ただ、最初はジョジョのスケベぶりに、唖然としてしまいますが、読み進むにしたがって、モイラの狡猾さに、だんだん、腹が立ってきます。特に、父親の歓心を得るために、自分から誘うところ(ジョジョの回想)には、吐き気がしてきました。
だから、この小説は、官能小説としては珍しく、胸クソ内容です。エイズが蔓延しない以前、フリーセックスがスタンダードだった頃の、古き良き、エロき? 物語だったと思えばよいのでしょうね。それはそれで、珍しい作品だと、感じました。それでは。
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