『エロティックな七分間』(作者不詳 竹内太郎/訳 富士見ロマン文庫 No.1)の感想
書籍『エロティックな七分間』(作者不詳 竹内太郎/訳 富士見ロマン文庫 No.1)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
……はぁーっ、読むのにこれほど時間のかかった富士見ロマン文庫は、初めてかもしれませぬ。
おもしろくない、わけではないのです。ひたすら、読みにくいのです。巻末の解説で、訳者様がこの作品を、「みごとな出来のポーノグラフィ」「最高の部類に属する作品」と、絶賛されておられるのを読み、私は精神的にずっこけました。訳者様、ほめておられる割に、この作品が出版されたいきさつしか、説明しておられず、どこがどう魅力的なのか、わからないではありませんか?
はっきり申し上げて、これを読んでドキワクするのは、私は難しいと思います。特に、ライトノベルに慣れ親しんだ方には、睡眠導入剤代わりにしかならないでしょう。
主人公は、アメリカ人の絵描きアーティストで、フランスに住んでいる若い女性、キャスリーン。あらすじとしては、「序の序」と題された冒頭で(しかし、10ページ以上あります)、身動きできず、傷ついている状態から、キャスリーンはセックスをし、自らに大きな影響を与えた三人の男性、ロジャー、ポール、ハロルドをメインに、回想し始めます。
親友のヴァージニア(ジニー)、トルコ人のルネ、美女モーリンとも濃厚に交わるのですが、キャスリーンが本当に愛しているのは、あの三人だけ。その中から、特に選んだ一人は……。
まず、いただけない点について。表紙の金子國義のイラストは、まさにエロくて、いい雰囲気です。さらに、モノクロとはいえ、何枚かの挿絵も掲げられていますが、その作者様の名前が見つかりません。単純に考えれば、金子國義なのでしょうが、私は池田満寿夫ではないかと、思っております。
読みにくかった理由の一つが、イメージと回想ばかりで、日本語翻訳された、ドストエフスキーの小説みたいに、改行が少なくて、文字びっしりなことです。眠たくなると、「え、どっちの行を読んでいたっけ?」と、情けない失敗を繰り返してしまいました。
乱交に女同士の交わりに、寝取られ、複数プレイと、エロティックな場面は満載なのですけどね。プリック、コック、私の谷間など、淫語もたっぷりなのに、表現次第でこれほどエッチでなくなるのかと、私は別な意味で感心してしまいました。
読後感は、官能小説というより、ヴァージニア・ウルフの、『灯台へ』に似ていると、思いました。
エイズが蔓延する前の、ピル解禁万歳! 女性解放万歳! 乱交サイコー! といった、古き良き時代の、古典的官能小説のおもむきです。
残念ながら、読む人を選ぶ作品ですね。でも、私は淫語のタイプやエロティック表現を知る上で、なかなか、そそられました。機会があれば、また読んでみたいです。それでは。
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