『マンマ』(ピエール・ベール 吉野博高/訳 富士見ロマン文庫 No.31)の感想
書籍『マンマ』(ピエール・ベール 吉野博高/訳 富士見ロマン文庫 No.31)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
250ページほどなのに、私は読了するまで、かなり時間がかかってしまいました。海外のエロティック小説を扱っているとはいえ、このお話は良くも悪くも、純文学のようです。興奮する方は、できるのでしょうが、私にとっては心理小説っぽい感じでした。
あらすじを説明いたしますと、少年フランソワは、年上の女で情婦(マンマ)たるソニアと別れ、新しい彼女と南方の都市で新生活を始めるべく、夜汽車に乗りこむところから始まります。そうやって、お話は、ソニアとの出会い、深まりゆく肉体関係、彼女のたちの悪いいたずら、他の女性との出会いと交わりと、ほぼ回想シーンで進んでいきます。
やがて、ソニアと好対照の、純真な女性、アンと知り合い、心身ともに強く結ばれるのですが、そのこともソニアに発覚してしまいます。細かい事情を聞き、ソニアは逆上するどころか、フランソアの出発の手伝いをし、駅で見送りさえするのです。後腐れなく別れられて、フランソアは安心するのですが、途中の駅で停車している間に、愛していたはずのアンに対して、心が冷えていくのを感じる一方、ソニアへの思いは……。
ラスト10ページ足らずに起こった、フランソアの心の急変には驚かされてしまいます。生温かいベッドのような、まったりした雰囲気、その最中で、わずかながらも、きらめくような官能描写が、おもしろかったです。
しかしながら、先ほど申したとおり、官能描写が読みたい、エロ本がいいと、願っていらっしゃる方には、地味といっては地味ですし、ストーリー展開がゆっくりめなので、私にとっては満足がいきましたけれども、退屈に感じる方もいらっしゃるかなと、思います。
加えて、最初は母性あふれる、魅力的な熟女といった感じのソニアが、徐々に、計算高くて、故意か本能、それとも偶然なのか、とことんフランソアや、あとがきでは省略しましたが、ドイツの少女、リゼロットをベッドに誘いこんで、もてあそぶような非道さえ行ないます。フランソアがソニアに幻滅し、コケティッシュなようで、本当は無垢なタイプのアンに惹かれるのも、当然と思えました、が……。
エロティック、官能がテーマの小説といっても、欧米と日本では、描写と主眼が異なるのでしょうね。あるいは、富士見ロマン文庫に選ばれたのは、ストーリー展開と描写力で有名な、古典的官能小説ということでしょうか。
ありがたくも、また何冊か、そちらの本を入手できましたので、読了次第、ご紹介いたします。遅読ですみませんが、お気長にお待ちください。
こちらは、特殊なエロティック小説ですが、熟女、少年、熟女攻め好きの方にお勧めいたします。それでは。
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