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2023年11月25日 (土)

『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫)の感想・その3

 書籍『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫)の感想・その3を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 それでは、独ソ戦の時系列に少しばかり沿った形で、私なりの感想を記してまいります。
 まず、女性達は、「母なる祖国は呼ぶ」という兵士募集ポスターに応じたり、あるいは、家族や村をファシストから守ろうと決意したり、ドイツ軍に殺された身内の敵を討つべく、志願して入隊したわけです。そういう彼女達に待っていたのは。

1)慣れない軍隊生活
 男性しかいなかった軍隊に、女性向けの装備や生活様式は、備わっていませんでした。女性全員が、がばがばした、男のものパンツをはいていたと、ローラ・アフメートワは笑いながら証言しましたが(P124)、こちらは笑えません。
 気晴らしのつもりで、かわいい服を着たり、髪に花を飾ったりすると、男性兵士から𠮟りつけられたそうです。

2)残酷なドイツ軍
 以前から、「地獄の独ソ戦」と、知っていたつもりでしたが、ここまでやるのかと、絶句しました。
 たとえば、タマーラ・ステパノヴナ・ウムニャギナ(赤軍伍長)P454 によると、三歳から四歳の子供たちを列車から放り出し、森へ走って逃げる彼らを、ドイツ軍の戦車が押しつぶしていきました。
 ワレンチーナ・ミハイロヴナ・イリケーヴィチ(パルチザン)は、五人の子供を失った女性を、P380で語りました。四人がドイツ兵に銃殺され、最後に残った乳飲み子を、ファシストの手にかかるくらいならばと、自分の手で地面に投げつけて殺し、発狂してしまいました。楽になったどころか、彼女は自分が死人だと思いこんでいるのです。

3)冷酷なソ連軍
 自軍に冷血無比なんて、ありえないはずなのですが、この戦争は恐るべきものでした。
 アリヴィナ・アレクサンドロヴナ・ガンチムロワ(上級軍曹)P85の証言では、無断で逃げ出したインテリ風の若者が、大勢の兵士達の整列する前に引き出され、「銃殺しないでくれ」「家では母が一人っきりなんだ」と、泣いて哀願するのを、見せしめに銃殺しました。スターリンの、後退したら銃殺という、恐るべき命令が出されたためなのですが、泣いておびえる人(戦争にあっては、こういうタイプこそ正常なはずなのに)を殺すなんて、本当にむごすぎます。
 ニーナ・アレクセーエヴナ・セミョーノワ(二等兵)P127は、旧式のトラックで、老人や子供たちといった顔ぶれの志願兵が運ばれて来て、ライフル銃はなく、各人に手榴弾二個を与えらえて、戦闘へ出されたそうです。戦う以外に、ライフル銃を入手できなかったのです。そうして、全員戦死しました。素人同然の兵士は、ライフル銃以下ということでしょうか。絶句……。

4)過酷すぎる戦場の環境
 男物のパンツや軍靴しかなかったことも、そのうちの一つですが。
 ナターリヤ・イワノーヴナ・セルゲーエワ(二等兵)P128は、二百人もの負傷兵を、たった一人で看護したそうです。ろくに眠れず、腰かける暇さえなかったそうで、まさに地獄。

5)戦後の生き地獄
 そうやって、輝かしい勝利をつかんだはずなのに。
 ジナイーダ・ワシリーエヴナ(衛星指導員)P246によれば、1945年の末、戦争であったことは忘れて生活を楽しもうと、市場へ行ったところ、手足を失った若い元兵士の人々が涙にくれ、物乞いをしているのでした。痛ましい。
 ワレンチーナ・エヴドキモヴナ・M(パルチザン)P439の夫は、捕虜となるのを恐れてピストル自殺をするつもりが、弾切れでできず、捜査官たちに、「どうして生き残った!」と、怒鳴りつけられたそうです。もう、どう言っていいやら……。

 次回で、恐らく感想が完成できると、思います。もうしばらくだけ、お付き合いください。それでは。


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