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2023年11月28日 (火)

『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫)の感想・その4

 書籍『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫)の感想・その4を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

6)女の敵は女-罵声
 クラヴヂア・S(狙撃兵)P367によれば、勝利して祖国へ帰ってきたところ、女たちから、「戦地のあばずれ、戦争の雌犬め……」と、さんざん侮辱を受けたそうです。普通に結婚し母親となっても、罪悪感(PTSDでしょうか?)がつきまといます。夫は出ていく時、「まともな女なら、戦争なんか行かないさ。(中略)だからまともな赤ん坊を生めないんだ」と、非難したということです。

7)女の敵は女-母親さえも
 クラヴチヤ・グリゴリエヴナ・クローヒナ(上級軍曹)はP52で、戦線から戻れたものの、二十一歳にして白髪、脳挫傷があって片耳がよく聞こえません。そんな彼女に、母は、「もし負傷するくらいなら殺してしまってください、女の子が不具にならないように」と、真剣に祈っていたと、打ち明けます。彼女の放心した表情が、目に浮かびます。

 他にも印象的なこと、衝撃的な出来事はあったと思うのですが、私は探しきれませんでした。すみません。
 しかしながら、これらのエピソード以外にも、息をのみ、胸が熱くなるような証言が、数えきれないほどに存在しているからです。
 この作品は、私のお気に入り本として、仕事部屋に置いて、時々読むようにしておりますので、また何か取り上げたいことが見つかりましたら、「追記」という形でアップさせていただきます。

 この作品のタイトルに関してなのですが、クセーニャ・セルゲーエヴナ・オサトチェワ(二等兵)P81の、締めくくりの証言によるものかと、思われます。次のとおり。

 今はクリミヤに住んでいます……花が咲き乱れています。私は毎日窓から海をながめています。でも、全身の痛みであえいでいます。私は今でも、女の顔をしていません。よく泣きます。毎日、呻いています。思い出しては。

 男性兵士は英雄として称賛されたのに、女性兵士は罵声を浴びせられ、偏見の目で見られたために、戦争の体験さえも誰にも語らなくなり、恩賞ももらえず、PTSDや古傷の痛み、孤独に苦しみながら、沈黙するしかなかったわけです。
 これは、ソ連という国家限定の習慣、大昔の出来事と、切り捨ててしまっていいのでしょうか。
 戦勝で喜んだソ連はロシアとなって、現在、ウクライナと戦争中とは、何という皮肉な運命でしょう。
 タマーラ・ステパノヴナ・ウムニャギナ(赤軍伍長)の、次の言葉が、胸に迫ります。

 あたしたち、夢見ていた、「戦争が終わるまで生き延びられたら、戦争のあとの人々はどんなに幸せな人たちだろう!(中略)」ってね。そのことを疑わなかった、これっぽちも。
 ところが、どうよ……え? またまた、殺し合ってる。一番理解できないことよ……いったいこれはどういうことなんだろう? え? 私たちってのは……

 戦争の恐ろしさ、無意味さというものは、今後とも、たくさんのメディアや表現物で、私は見聞きして、ここでアップするかと思います。
 けれども、しょせん政治は変えられないとか、何をしても無駄だと、思考停止をしてしまっては、第二次世界大戦、太平洋戦争、今行われている戦争の犠牲者の方々は、まったく浮かばれないでしょう。何を考えてなすべきか、微力ながら学習し、進んでいきたいと、私は思います。
 最後に、作者様と翻訳者の方に、心から感謝いたします。
 そして、戦争の犠牲者の方々へ、ご冥福を祈ります。それでは。

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