『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫)の感想・その2
書籍『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり/訳 岩波現代文庫)の感想・その2を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
その1で、ちょこっと触れましたが、この本には各章タイトルが、次のようにつけられています。
人間は戦争よりずっと大きい(執筆日誌一九七八年から一九八五年より)
(※次からが本文です)
思い出したくない
お嬢ちゃんたち、まだねんねじゃないか
恐怖の臭いと鞄いっぱいのチョコレート菓子
しきたりと生活
母のところに戻ったのは私一人だけ……
わが家には二つの戦争が同居してるの
受話器は弾丸を発しない
私たちの褒美は小さなメダルだった
お人形とライフル
死について、そして死を前にしたときの驚きについて
馬や小鳥たちの思い出
あれは私じゃないわ
あの目を今でも憶えています
私たちは銃を撃ってたんじゃない
特別な石けん「K」と営倉について
焼き付いた軸受けメタルとロシア式の汚い言葉のこと
兵隊であることが求められたけれど、かわいい女の子でもいたかった
甲高い乙女の「ソプラノ」と迷信
工兵小隊長ってものは二ヶ月しか生きていられないんですよ、お嬢さん方!
いまいましい女(あま)と五月のバラの花
空を前にした時の不思議な静けさと失われた指輪のこと
人間の孤独と弾丸
家畜のエサにしかならないこまっかいクズジャガイモまでだしてくれた
お母ちゃんお父ちゃんのこと
ちっぽけな人生と大きな理念について
子供の入浴とお父さんのようなお母さんについて
赤ずきんちゃんのこと、戦地で猫が見つかる喜びのこと
ひそひそ声と叫び声
その人は心臓あたりに手をあてて……
間違いだらけの作文とコメディー映画のこと
ふと、生きていたいと猛烈に願った
長くなってしまいましたが、目次でこれらを読むだけでも、重く切実な内容であることが、おわかりいただけるかと、思います。
インタビューの長さは、もちろん皆、まちまちですが、一人称も、「私」「わたし」「あたし」と、いろいろ。泣いたり、笑ったり(ウソではありません。くわしいことは、後ほど)、ていねいな言い方であったり、友達口調だったり。
ただ、具体的に取り上げていく場合、章タイトルを書いていくのはやめて、ページ数と名前、職業のみにいたします。すみませぬ。
それから、私がこの作品でもっとも違和感を覚えたのは、どの女性も、祖国の危機を救おうと決意したり、身内の敵を討とうとしたりと、きっかけは様々ながらも、ごく当たり前の生活をやめて志願したことを、まったく後悔していないことです。
私は憲法九条に守られて、バカになっているかもしれません。が、ほぼ全員、戦争中も戦後も、不幸な目にあっているというのに、スターリンを賞賛する声さえもあって、戸惑いました。まあ、本当に彼を批判していたら、この作品も作者様も存在しなかったかもしれませんが。
もし、私の感想がわかりにくい、簡潔にテーマを知りたいという方がおられましたら、最終章「ふと、生きていたいと猛烈に願った」を読まれることをお勧めいたします。地獄のスターリングラード戦の推移と顛末が、タマーラ・ステパノヴナ・ウムニャギナ 赤軍伍長(衛星指導員)によって語られているからです。
冒頭から辛い描写ですが、勝利で喜ぶ間もなく、新たな苦しみが始まるわけです。長いお話ですが、個人の体験を通して、戦争の本質を描いている、名作の一つだと思います。では、その3で、今度こそ、作品の細部について語ります。それでは。
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