『新九郎、奔る!』14巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想
コミック『新九郎、奔る!』14巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
前半と後半の落差というか、コントラストに、私は驚かされてしまいました。もう14巻になったというのに、それぞれの巻ごとに、異なる持ち味があって、なかなか魅せられてしまいます。
あらすじとしては、少し面倒なこともあったのですが、18歳のぬいは、新九郎の奥方となりました。
そして、元猿楽師を広沢尚正と名乗らせて寵臣にした、将軍の義尚でしたが、奉行衆と奉公衆の対立を招き、前者の布施英基、飯尾元連は、いったん京を離れ、大御所の義政に許されて戻って来たところを、奉公衆に討ち取られるという、血生臭い事件を黙認します。
義政は出家し、伊豆の堀越御所では、その庶兄の政知は、六歳になる双子の息子達、寿王と茶々丸の将来について思い悩んでおりました。そんな折しも、義政は寿王を上洛させるよう、命じてきます。将来的に、寿王が将軍になるか、自分が京へ戻れるかと、政知は期待し、茶々丸もまた、伊豆がわがものになるだろうと、胸をふくらませるのでした。
関東では、扇谷(上杉)定正が大田道灌の動向に疑いの目を向け始めます。道灌がことわりなく息子を嫡男にし、さらに、元服させて、何と古河公方の足利成氏のもとへ出仕させたのでした。家来や弟からも、道灌への批判が相次いだため、定正は、ついに恐ろしい計画を実行せざるを得なくなったのでした。道灌を糟屋へ招き、風呂のもてなしをした後に……。
大田道灌、退場。「当方滅亡! 当方滅亡の道でござるぞ!!」が、最終の言葉にして、決めセリフでした。
このラストのインパクトは、今川義忠の討ち死によりも大きかったですね。おかげで、前半の、ぬいの人柄にもよるのですが、ほのぼの、のんびりムードが、よい意味で吹っ飛んでしまいました。
定正と道灌、会話をすればするほど、定正の小物ぶり、道灌の卓越した怜悧さが際立つので、衝突は避けられないだろうと、私は予想していましたが、やっぱり、でした。これは、作者様のストーリー展開が巧みだったためでしょう。
私が少し考えるに、道灌の言動が、人を食っているかのような、大胆すぎるためだったのでしょうか。それでいて、道灌は主人に見切りをつけなかったので、残念な結末になってしまいました。
もし、道灌の運命を変えるならば、言葉は控えめに、あくまで主人を立てる形にすればよかったかもしれませぬ。しかし、定正のような人物ならば、それでも「やってしまう」可能性大です。惜しいなあ。
新九郎の影が、薄くなってしまうような巻でしたが、次は、甥の龍王丸が駿河へ帰って当主になるという、お話のようです。当主としての学びはしていない様子ですし、のん気な性格の龍王丸は大丈夫でないでしょう。新九郎はまた、悩まされそうで、先行きはまたわかりませぬ。なので、私はまた、わくわくしながら、次巻も購入しますよ。お勧めいたします。それでは。
ご協力お願いします。
漫画・コミックランキング
| 固定リンク | 0
« 『オプス・ピストルム ’30年代パリの性的自画像』(ヘンリー・ミラー 田村隆一/訳 富士見ロマン文庫 No.89)の感想 | トップページ | 『強制除霊師・斎 消された陵』(小林薫 監修:斎)の感想 »
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 『道玄坂探偵事務所 竜胆』(原作:花村萬月 画:市東亮子 秋田文庫)の感想(2024.10.05)
- 『真琴♡グッドバイ』(高橋葉介・朝日ソノラマ)の感想(2024.09.28)
- 『ベルセルク』11巻(三浦建太郎・白泉社)の感想(2024.09.21)
- 『ベルセルク』10巻(三浦建太郎・白泉社)の感想(2024.09.16)
- 『新九郎、奔る!』17巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想(2024.08.25)
コメント