『女形気三郎』全7巻(ジョージ秋山・小学館)の感想
コミック『女形気三郎』全7巻(ジョージ秋山・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
この作品のタイトルで、「女形」は「おやま」でなく、「おんながた」と、読みます。恥ずかしながら、私はつい最近まで、間違っていました。
全7巻のうち、1~4巻までは普通なのに、なぜかそれ以降は巻数でなく、「恵比寿極楽地獄顔」「怒りの海 地獄の初裁き」「最後の地獄裁き」というタイトル名になっています。掲載誌が変更になったのでしょうか、それとも、作者様のお考えによるのでしょうかね?
巻ごとに収録されているのは、おおよそ7~9話で、最後の巻の2話を除けば、すべて一話完結。どちらから読んでもいい仕様です。
勧善懲悪の、胸のすく作風で、なおかつ、色っぽくもエロいお話が読みたいと思って、購入したのですけれども。
読後感は、ちと複雑です。
主人公は、腕利きの廻り髪結い「気三郎」。江戸の大根長屋に一人暮らしをしていて、年頃の娘のねずみに恋されながらも、なごやかな日々.を送っております。けれども、同心の鬼龍院、その手下の手ぬぐい佐吉から、女性が殺された不可解な事件の情報を聞くなり、「女形気三郎」と名乗る妖艶な美女に変装して、下手人を斬殺して、解決する、または恨みを晴らしてやる、というストーリーです。
悪人の設定、気三郎の裁きの方法は様々なのですが、この展開で、ほぼ最終回まで続きます。
なので、ですから、巨匠の作品に対して、とても残念なことを記しますが。
後半になるほど、私は飽きてきました。
一応、女形気三郎の正体は何なのか、鬼龍院はそれを判明できるか、といったような謎というか、伏線が張られているのに、作者様は、気三郎と鬼龍院の丁々発止のやり取りを、謎を含ませたまま終わらせたかったのでしょうか?
後半の鬼龍院は、髪結い気三郎=女形気三郎だと、内心断定していて、同心として知り得た事件の概要、容疑者などの重要情報を、ぺらぺらと、明かすようになります。これ、現在で行なったら、犯罪ですよね。いいのでしょうか。
さらに、ねずみと気三郎の恋模様は、ずっと描かれてはいますが、ねずみの片思いに、長屋のおかみさん達は冷やかしたり、大笑いしたりというスタンスのまま、まったく進みませんでした。ねずみはドジっ子ですが、さすがにかわいそうになりましたね。
とにかく、女形気三郎は強い! たまに、他の殺し方も行ないますが、悪人は斬り殺して成敗します。毎回、次のセリフを言った後に。
女を泣かし、たぶらかし、女を危めてもお裁きなしとは、さても女の一大事!!
女形気三郎、裁かせていただきます。
上記を、「女形気三郎 裁かせていただきました」と変えて、仕置き現場に書き付けておくこともあります。
このフェミニストのような気三郎の、女性を助けようと行動するようになった発端は、「怒りの海 地獄の初裁き」で、タイトルと同じ表題のお話にて判明します。
もう一つ、私がおもしろいなと思ったのは、腕は立つはずですが、何となく陰キャのような青年、手ぬぐい佐吉。彼は手ぬぐいを濡らして、刀を防ぎ、下手人に対抗する腕利きですが、何と鬼龍院に恋心を抱いていて、色男の気三郎を目の敵にしています。これまた、6冊目の「濡れ手拭い 地獄の熱風」で、佐吉が気三郎よりも活躍しますが、こちらも進展なし! 惜しい!
だから、私はたくさんの美形男性が妖しい美女に変身し、色仕掛けで悪人を惑わせた挙句、成敗する、という同じ流れのお話のダイジェスト版を、ずっと読まされているような気分になってしまいました。返す返すも、残念です。
が、作者様お得意の色っぽい絵柄は健在です。将来、連続時代劇の原作になってくださらないかなと、期待しております。
そういうわけで、うーんと、うなる内容ですが、私はおもしろく読めました。それでは。
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