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2024年2月 3日 (土)

『絢爛たるグランドセーヌ』17巻(Cuvie・秋田書店)の感想

 コミック『絢爛たるグランドセーヌ』17巻(Cuvie・秋田書店)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 いよいよ、奏のロイヤル・バレエ・スクール、学生寮、ルームメイト達を中心とした生活が始まります。これは、日本ではあまり触れられていなかった、奏の、青春物語と呼んでいいでしょう。

 あらすじを簡単に説明いたしましょう。
「くるみ割り人形」の配役を決定されることになり、奏は、ねずみ役に。発表会デビューだった頃と違って、ピーター・ライト版なので、被り物をつかうわけです。さらに、奏は下級生をリードする役目も負うことになり、伝説のマーゴ・フォンティンのすばらしさをも知るきっかけも得たのでした。
 一方、奏のルームメイト、キーラは、振付コンクールにエントリーするため、がんばっています。振付は、知識の量、教養、音感と、幅広い能力が必要であり、加えて、各ダンサーの持ち味を生かせるよう、観察力もなくてはいけないことに気づき、奏は改めて彼女に感服します。
 そのような多大のレッスン、習得しなければならないバレエ作品のストーリーや本質、歴史といった背景(バックグラウンド)と、奏は好きなバレエの世界ながら、必死になっています。エヴリンとは親友っぽくなっていますが、こだわりが強く、自分の世界に埋没しがちなキーラとは、小競り合いも起こしてしまいます。
 そんな時、アンドレアから、突然の連絡。週末に、バレエ団で踊ると告げ、見事なコンテをスマホで見せてくれます。いったん、寮を飛び出したキーラは、ひどく落ちこんでいましたけれども、奏はアンドレアの、言葉を使った踊りの話をした途端、吹っ切れてしまったようでした。
 男子も交えて、皆、朗読内容や衣装について、熱く語り合うのでした。さあ、これから、どうなる?

 残念なところは、私がバレエ無知なため、振付の難しさ、すばらしさを理解しきれなかったことです。これは、どうしても予備知識が必要かも?
 他には、今までのコンクールと違って、よく言えば平和、悪く言えば、緊迫感がないお話にも感じられます。
 それでも、私は、奏がバレエのレッスンに熱中しながらも、ルームメイトと冗談を言い合ったり、互いの夢を語り合ったりと、青春を満喫している様子が、ゆったりしていて、心地よかったです。
 それにしても、奏は、ロンドンで、ねずみのマスクをかぶって踊るわけですか? リアルなねずみに近い感じですから、かわいくないけれども、どうするのでしょうね。こういうバレエ漫画のヒロインは、初めてかもしれませぬ。
 今回は、奏よりも、エキセントリックなキーラへ、いっそうスポットライトが当たっていたような気がします。奏が向上心のおもむくまま、自分用の振付がやってみたいと言った瞬間の、横暴で、独善的とも言える言動には、驚かされました。すかさず、ルームメイトからもそれを指摘され、キーラは気恥ずかしさか、それとも、自己嫌悪におちいったのか、その場から逃げてしまいます。
 結果的に、丸く収まりましたが、この作品も先が読めませぬ。順調? 逆境? 奏は、どこへ、どのように進んでいくのでしょうか。本当に、目が離せませぬ。美しく優雅、けれども、バトル漫画に負けない熱量を持っていると、私は思います。お勧めいたします。それでは。


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