『絢爛たるグランドセーヌ』18巻(Cuvie・秋田書店)の感想
コミック『絢爛たるグランドセーヌ』18巻(Cuvie・秋田書店)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
18巻は、何と、奏の友人兼ライバル的な栗栖さくらが、思いがけないピンチに見舞われるという、本編と異なる別エピソードに、私は目を奪われてしまいました。上昇志向の強さゆえに、日本人らしくない、さくらですが、メンタル的に……だったとは。
奏は、くるみ割り人形のねずみ役に、学内振付コンクールの準備と、両方のレッスンにと、多忙ながらも、青春を満喫しまくっている感じです。こういう、毎日が驚きと発見、感動の連続って、すばらしいものです。
あらすじを説明しましょう。初めて、ねずみの被り物を使用した奏ですが、その重さと視界が狭くなることに、戸惑ってしまいます。けれども、ねずみの王役のファースト・ソリストが前面に出たのに引っ張られ、パワフルに動き回れたのでした。その話を、奏は電話でさくらに語ったところ、ドイツのさくらは、「シンデレラ」の主役を踊ることになったと、告げます。
奏には打ち明けなかったものの、実は、さくらは、シンデレラが、ヒロインの性格、ストーリーとも、大嫌い。ライバルまみれのスクール内で、その葛藤を口に出せず、相談もできません。体調まで崩すほど悩むのですが、そのような時、母の栗栖先生から電話でアドバイスされ、さくらは、「私とは似ても似つかない」と、割り切り、演じることができたのでした。
そして、奏は振付コンクールに。他の友人の演出の違いに感心させられながら、ニコルズ先生、振付のブキャナン先生らの前で踊ります。結果、その作品「ENCOUNTER(エンカウンター)」は、ファイナル出場が決定します。
ついに、「くるみ割り人形」本番。プロ達と同じ舞台に立てるという、バレエを始めた幼い頃の夢が、少しだけでもかなったと、奏は、うれしい興奮が止められません。ねずみ達が活躍する場面で、「夢の世界に 私はいる」と、実感します。
ニコルズ先生の補習を受けるなど、いっそう忙しくなる奏でしたが、夢に近づく希望に胸をふくらませます。うっかり、スミス校長先生と廊下で鉢合わせするのですが、先生は以前と違って、好意的にほめてくれます。が、「卒業まで頑張ってくれ」の一言に、奏は固まります。
ラスト、奏は、ロイヤル・バレエ・スクール卒業で終わる、ということなのでしょうか?
それに、あらすじでは省略しましたが、先輩の七海が、振付コンクールに張り切る奏と裏腹に、実にそっけない言動なのも、気にかかります。奏にとっては順風満帆っぽいのですけれども、今回は妙に不気味というか、謎めいているのです。
プライドの高いさくらが、困難に直面し、それを乗り越えるエピソードも、終わってしまえば簡単でしたが、案外、私達の悩みも、誰かから指摘されれば、するっと、切り抜けられるかもなあと、私は思いました。
さて、今回の名セリフは二つ。
「気負わなくても 自然と人を引っ張っていけるのが スターなのかもしれないね」
「少しずつ 少しずつだけど 夢に近づいているのがわかる
それがうれしくて 走る足を止められない
早く早く あの場所まで」
後のセリフ、今もこれからも、私はこんなふうに夢を追っていきたいと、思わせてくれました。お勧めいたします。また、次の巻も購入しますよ。それでは。
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